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移住者の声

地域に根ざした百貨店を

地域の方たちの橋渡し役として

京都府北部、日本海に面した丹後半島に位置する京丹後市。その中の南部に位置する大宮町で、東田一馬さんは奥様の真希さんと一緒に“日本一小さな百貨店”つねよし百貨店を運営しています。

「京丹後市への移住は、母校のメーリングリストで見た“田舎で働き隊”を募集する記事がきっかけです。当初は半年だけの予定でしたが、地域活性を担う地域コンサルタントの仕事に就き、丹後と京都市を行き来する生活になりました。そんな折、働き隊の研修先だった地域唯一のお店である『常吉村営百貨店』が閉店するという話を受け、新たに『つねよし百貨店』として引き継ぐことにしたのです。気がつくと早いもので、6年目の春を迎えています。」

移住前と移住後、何が大きく変わったのかを一馬さんに伺うと、こんな答えが返ってきました。

「移住後は生活スタイルが180度変わりましたね。家族で過ごす時間が増え、家族みんなで食卓を囲い、息子と一緒に風呂に入るという暮らしが得られました。そんな毎日の繰り返しが、今の僕にとっては何よりも宝物です。」

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京丹後市の中でも大宮町は里山に抱かれ、穏やかな空気が流れる地域。今では、この豊かな自然の中で、本当に良い食物を生産しようと就農を目指す方、地域に新しい産業を起こそうとUターンをする若者たちもいます。新しく地域の仲間になった方、ずっとこの地域に住んでいる方、地域の様々な方たちが集まるコミュニティスペースになればと一馬さんは語ります。

「地域の人々の繋がり、また、その暮らしを支える橋渡し役として。つねよし百貨店は、ずっとそうありたいと考えています。もちろん、他府県や町外から来られたお客様に大宮町の魅力や生産物の良さを知ってもらうための仲立ち役としても、今よりもっと一生懸命にやっていきたいと思っています。」

そんな一馬さんに、お店を続けていく上でのやり甲斐や喜びについて尋ねてみました。

「つねよし百貨店はコンビニやスーパーと違い、“どこで、誰が、いつ採ったか”分かるものを販売できることが魅力。橋渡し役として、生産者の方の笑顔と、お客様の笑顔の両方を見ることができます。これは本当に嬉しくて、かけがえのないことだと思っています。」

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受け入れてくれたことへの感謝

一馬さんは、大宮町の魅力について、表情を和らげながら、次のように話してくれました。

「大宮町の人たちは穏やかな人が多く、私たちが受け入れてもらえたのも地域の方々の人となりのおかげ。そういった面だけでなく、自然豊かで子どもの遊べる場所がたくさんあるのも嬉しいですね。山もありますし、空き地もある。神社も遊び場の一つになります。晴れた日はもちろん、雨が降れば水たまりが、雪が降れば雪山が格好の遊び道具に。のびのびと動き回る子どもを見ていると、ここに来て良かったとしみじみ感じます。」

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人々の手と手を繋ぎ、生産者と消費者の間も繋ぐ。その大きな役割を担う一馬さんの背景には、地域の方々の穏やかで温かな心と、受け入れてもらえたという感謝の気持ちがありました。住むところが変わり、暮らしが変化する中で、失ったものもあるかもしれません。それでもなお、得たもの、得るものも大きい。移住とは、そういったものなのかもしれません。

過去から未来へ繋ぐ

米野菜、味噌、醤油といったどの家庭でもあたりまえに作られてきた食べものも、大切に手入れしながら先祖代々住んできた立派な家や家具、建具も、子どもの笑い声が聞こえるあぜ道や畑に山も、自然の恵みに感謝しながら何ひとつ無駄にしようとしない手仕事の精神や知恵、技術も、そのすべてがこれまで地域で子や孫へ脈々と受け継がれてきた暮らしのかたちです。

手間のかからない便利な生活ができる現代。その当たり前だった暮らしの様子が移ろい行くなかで、自ずと受け継がれなくなった先人たちが繋いできたバトン。知らず知らずのうちにどんどん失われていくバトンに価値や魅力を感じ、ひとつでも拾いあげ、大事に握り締め、そして次の世代へ渡していくことは、いまを生きる人にしかできない尊さを感じます。

これまで紡いできた暮らしを受け継ぎ、豊かさと愉しさを感じながら暮らしていくことは、そこに暮らす先人たちから、今まで知らなかったわくわくするような新しいことを学ぶことなのかもしれません。

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