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移住者の声

築130年の茅葺き民家を修復

志賀郷での温かな日々

「移住して失ったものは?」と質問すると、金田克彦さんは奥様の博子さんを見て「化粧品?」とからかうように言いました。博子さんはそれを否定せず「ほかに革靴ときれいな服」と続けます。それから二人は、そろって「ハハハ!」と大笑い。その屈託のなさから、今の生活を楽しんでいることが伝わってきました。

克彦さんは博子さんとの結婚を期に京都府綾部市志賀郷に移住しました。かれこれ10年以上の時間を志賀郷で過ごしています。もともと、志賀郷への移住は博子さんが先でした。名古屋で勤め人として生活する日々から、農業を志し亀岡へ渡り、知識と経験を積んだ後、志賀郷へと移住。プロの農家として暮らしていたそうです。そして克彦さんと出会い、お子さんに恵まれた今でも志賀郷で温かな日々を過ごしています。

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大工である克彦さんは新築物件を扱う傍ら、古民家の再生や修復に惹かれ、実際にそれらに何度も携わってきました。そんな中で、志賀郷への移住から数年後、とある民家を紹介してもらいます。

「築130年の茅葺き民家でした。でも、40年間空家だったので、現代の工夫も取り入れながら、少しずつ着実に修復していくことにしたんです。気をつけているのが、現代の暮らしをメインにして、そこに合わせて古民家を無理やり変えるのではなく、古民家をメインに、現代の暮らしをちょっと沿わせるようにしていること。古民家は先人たちが積み重ねてきた伝統技法の結晶なので、大切にしたいし、それを未来に残していくことに携われるというのは嬉しい限りです。」

これまでの暮らしをそっくり持ち込み、その土地に変化を求めるのではなく、土地やそこに暮らす人々の生活に、これまでの暮らしを少し混ぜ合わせ、移住先の土地やそこでの生活に上手に馴染んでいく。そういったことが、移住後の暮らしには肝心なことなのかもしれません。

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自然と人の優しさ

志賀郷で暮らす日々はどのようなものなのでしょうか。克彦さんに聞いてみました。

「志賀郷は、自然が優しいんです。京都といえば、夏は暑く、冬は寒いというのが定説ですが、ここは暑さも寒さもそこそこで、過ごしやすい。海は30分くらいで行けますし、山もあるし、川遊びもできて、なんでもあり。そういった優しく懐の広い土地柄のせいか、住んでいる人も一様に優しく、何かと良くしてもらってありがたいですね。」

笑顔いっぱいに、そう語る克彦さん。志賀郷での暮らしは充実した毎日のようで、こう続けます。

「希望者を募って小屋づくりのワークショップを催したり、妻が栽培した大豆でしょうゆや味噌を作ったり、シカやイノシシを猟で獲ったり。季節ごとの楽しみがあり、仕事があり、出会いがある。志賀郷での暮らしは、かけがえのない日々です。」

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しかし、移住後の暮らしは楽しいことばかりではありません。時には厳しい面もあります。例えば収入について、克彦さんはこう話します。

「都会よりも家賃や食費は安くすみますが、最低限の収入でいいと思っていると、住まいの設備が故障したときなど、急な入り用があった時に困ります。移住を考えているのならば、そういった緊急の場合などを視野にいれて、収入を確保するべきだと思います。」

移住は楽しいこと、嬉しいことも限りなくありますが、辛いことや厳しいことも少なくありません。移住した土地やそこでの生活を受け入れることはもちろん、様々な状況に適応できるように備えをしておくことも重要です。

季節によって仕事を変えてみる

ひとりにつき、仕事はひとつ。この考えは、いつ、誰が決めたことなのでしょうか。就職してひとつの会社で、定年まで全うする、という生き方が主流のなか、そういった疑問をもったとしても、他のスタイルが見えづらくなっているのも事実かもしれません。

でも地域を訪ねていくと、なかにはやりたいこと、興味のあることがいくつもあり、それを見事に組み合わせながら仕事をしたり、思いっきりやりたいことに集中して時には羽をのばしたりしている方に出会ったりもします。たとえば、夏しかできない海の仕事、冬しかできない山の仕事があります。春夏秋は畑、冬は狩猟に酒造りなど季節によって、人手が欲しい仕事は地域にはたくさんあります。季節にあわせて違う仕事に取り組んでいる方も地域にはたくさんいらっしゃいます。

ひとつの仕事だけでは生活が成り立たなくても、季節によっていくつもの顔をもちながら生活することで、生活の糧をつくる生活もあります。ひとつの仕事をやり遂げなければいけない、そんな発想が、自分をがんじがらめにしていることもあるのかもしれません。自然が春夏秋冬と季節によって顔を変えるように、人間だって、いくつもの顔をもつことで、より日々の営みが豊かになるのかもしれない。地域の方とお話をしていると、そう感じます。

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