里山の暮らしを、次の世代へ。南丹市で育む、人と地域のつながり
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神戸で生まれ、各地で暮らしながら「自分に合う暮らし方」を探してきたドワイヤーはづきさん。東日本大震災をきっかけに、食や暮らしの土台を自分たちの手元に引き寄せたいと考えるようになりました。現在は京都府南丹市で特定非営利活動法人つむぎを立ち上げ、農や森に関わる多様な人を増やす取り組みを行っています。
移住までの道のり、地域で出会った人たち、そして里山の未来を見据えた活動について伺いました。

・プロフィール
ドワイヤーはづきさん
神戸出身。特定非営利活動法人つむぎ代表理事。東京・西多摩郡日の出町での暮らしを経て、2012年に京都府南丹市へ移住。2019年南丹市移住ガイドブックを作成。その後、「農×移住」をテーマにした年間講座や地域シンポジウムなどを通して、移住定住促進や里山の担い手育成に取り組んでいる。自給米を育てる2児の母。
・南丹市へ移住したきっかけ
——南丹市へ移住されたきっかけを教えてください。
「もともとは神戸の出身なんです。南丹市に来る前は、東京の西多摩郡の山のふもとに住んでいました。若い頃からあちこちで暮らしながら、食べ物を自分で作りたい、という事は常に考えていた気がします。」
——大きな転機になった出来事はありましたか。
「震災で物流やエネルギーの不安を感じて、食べるものや暮らしの土台を、もう少し自分たちの手元に引き寄せたいと思うようになりました。なじみのある関西に戻り、足元のしっかりとした暮らしを作っていきたい、と田畑ができる移住先を探しました。」
「京都丹波に惹かれたのは、自然が豊かだったこともありますけど、それだけじゃないんです。農のある暮らしをしたい人たちがいて、地域の人と移住者がゆるやかにつながっている印象がありました。いろいろな人と出会える場所が地域にあって、お互いの顔が見える関係性を築くことができそう、と感じたことが大きかったですね。」

自宅から見える夕焼け「写真提供:(特非)つむぎ」
・山あいの静けさから、顔の見える暮らしへ
——移住前後で、暮らしはどのように変わりましたか。
「前に住んでいた西多摩郡の家は、登山道の入り口にあって、半径2キロほどは隣人がいませんでした。自然は近いけれど、地域の人と顔を合わせる機会は多くありませんでした。」
「南丹市では、すぐ近くにお隣さんがいて、顔を合わせたら自然に話せる。何かあったら相談もできる。お隣さんがいることにとても安心しました。」
「このあたりには、30年くらい前から移り住んできた人たちもいるんです。そういう先輩たちが、地域との関係を少しずつつくってきてくれたから、新しく来る人も入りやすくなっているのかなと思います。」

・移住してから見えてきた、地域ならではのこと
——移住してすぐに困ったことはありましたか。
「物件探しは大変でした。“ここだ”と思える場所に出会うまでに4年くらい。売買の話が進みかけても白紙になることもあって、あきらめずに探し続けるしかありませんでした。」
——農地を取得するうえで、難しさを感じたことはありましたか。
「ため池を使う地域だと、田んぼに水を引く仕組みが、地域の信頼関係と深くつながっているんです。地域の一員として少しずつ関係を築いていかないと、農のある暮らしは始められないんだなと感じました。」
「当時は空き家バンクも今ほど整っていなかったので、物件情報は人づてに得ることが多かったです。私たちの場合、現在の家に出会うまでの仮住まいの数年間がとてもよい導入期間だったな、と思います。」
・地域のこれからを思って始めた「TSUMUGI-つむぎ-」
——「TSUMUGI-つむぎ–」の活動を始めた背景には、どんな思いがあったのでしょうか。
「2016年頃から、集落の高齢化を肌で感じるようになりました。このままだと農地を含めて里山の手入れが続けられないかもしれない。一方で、農のある暮らしに関心を持つ若い人たちもいる。地域に必要な作業と、関わりたい人をつなぐ仕組みがあればいいと思ったんです。」
「担い手っていうと、専業農家の人だけを思い浮かべるかもしれません。でも、小さい規模の田畑で作物を育てながら、草刈りをする、水路を見る、集落のインフラ整備をする、森の手入れをする…、そういう小さい作業の積み重ねが地域を支える「担い手」だと思うんです。」

・体験しながら、地域との距離を近づける
——講座で大切にしていることは何ですか。
「草刈りのための刈払機やチェーンソーの使い方、農地や水路の管理など、里山で暮らし、関わるために必要なことを現場で体験してもらいます。地域にはどんな仕組みやルールがあって、自分はどこまでできるのか、どんなスキルを身につけなければならないか、を知ることが大事なんです。」
「地域の農家さんや森林を管理している方にも協力してもらっています。講座は技術を学ぶ場でもありますが、“困ったときはこの人に聞けばいい”と知る、人と人がつながる場でもあるんです。」

・人が集まり、学び合える場所へ
——今後、どのような活動を広げていきたいですか。
「今は、資材置き場も兼ねた事務所をつくっているところです。学生さんや移住を考えている人と地域の人が、交流できるような場所にもしていきたいと思っています。」
「農業だけで暮らしていくのは簡単ではありません。だから、副業収入と組み合わせる“半農半X”の働き方も選択肢として伝えたい。若い人たちが地域に関わりながら、自分らしい暮らしを無理なく育てていける仕組みをつくりたいですね。」

・移住を考える人へ
「制度や仕組みを調べることも大事ですけど、実際の暮らしは、その土地ごとの約束ごとや、日々の関わりの中で少しずつ見えてくるものだと思います。「自然豊かな美しい里山」の風景は、そこに住む人たちが日々丁寧に手を入れてきたからこそのもの。そして里山の維持管理は一人ではできません。地域の人、移住者、学生、行政——いろんな立場の人が関わることで、未来につながる仕組みが生まれると思っています。」
暮らしを自分たちの手でつくりながら、地域の未来にも少しずつ関わっていく。ドワイヤーさんの言葉からは、移住を「住む場所を変えること」だけでなく、地域と一緒に暮らしを育てていく選択として捉えるまなざしが伝わってきます。
NPO法人つむぎHP https://tsumugi-kyoto.net/