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イベントレポート

京都ローカルはしご旅 Vol.4「空き家を活用した人口1200人のまちづくり」

こんにちは、京都移住コンシェルジュの磯貝です。
今回は、4月30日(木)に開催された京都移住計画(株式会社ツナグム)主催の「京都ローカルはしご旅〜UIターンではじめた地域プロジェクト〜」イベントレポート第4弾をご紹介します!≪セミナー概要はこちら
第4弾のゲストは藤田 始史さん。テーマは「空き家を活用した人口1200人のまちづくり」。

◆ゲストスピーカー紹介:藤田 始史さん(笠置町)
京都工芸繊維大学大学院卒。設計事務所、デザイン事務所勤務ののち、都市コンサルタントで勤務。同時に、個人事業主として、まちづくりに参画。2018年から2020年まで、笠置町の地域おこし協力隊。1級建築士。

まずは藤田さんから、笠置町の紹介と現在の活動内容、そこに至るまでの背景をお話いただきました。
藤田さんは1級建築士でもあるので、建築家としての視点から、新型コロナウイルス感染症の影響まで見据えたとても興味深いお話をしてくださいました。


人が関わり合うことによって、おもしろいことに発展していく


藤田さんが今年の3月まで地域おこし協力隊として活動されていた笠置町は、京都府南部に位置し、人口が日本で2番目、西日本では最も人口の少ない町です。
笠置町では、春の桜、秋の紅葉など四季折々の風景が楽しめる他に、キャンプやカヌー、ボルダリングなども盛んで、年間を通して約25万人が観光に訪れています。

藤田さんは、和歌山県出身。みかん農家の孫として生まれ、ゆくゆくは家業を継いでくれるだろうと、周囲からの期待もあったそう。小学生のころ神戸市に引越しし、阪神淡路大震災を経験したことで、建築家を目指すように。建築を学べる京都市内の大学・大学院に進学し、卒業後は設計事務所・デザイン事務所に勤務。建築家という夢を着実に実現してきた反面、仕事は激務で、心身共に疲弊していたそうです。
そんな時、たまたま声がかかった京都府和束町(※1)の茶農家のお手伝いをしてみると、農家の仕事が楽しくて、意外と自分に合っていることに気づいた藤田さん。地域の方とお話をする中で、「自分の孫や子供が地元に戻ってこない」という声を聞き、自分の人生とも重なるものを感じ、「まちづくりの仕事をしよう」という思いに至ったとお話してくださいました。
その後、コンサルタントとしてまちづくりに関わるようになり、その流れで笠置町の地域おこし協力隊に着任されました。
(※1 京都府南部の宇治茶の生産地。笠置町と隣接している。)

藤田さんは、地域おこし協力隊の任期中、「地元の方の中にはこれまでの慣習や地域を守る意識が強く、異なる意見や新しいアイデアを受け入れにくい現状」があることを感じており、空き家活用を通して、それを少しずつほぐしていく作業に力を入れていたそうです。
実際に、空き家を活用して人が集まれるイベントスペースを作った際にも、初めは様子を伺っていた地域の方が、3〜4年かけて少しずつ協力してくれるようになったそうです。7年経った今では、ほとんど地域の方だけで運営してくれるようになったとのこと。
公私ともに活動する中で、和束町の茶農家さんとクラフトビールの醸造会社が出会って、茶ビールという新商品が生まれ、新たな広がりも見せているようです。

「地域の人の協力を得るには、理解してもらうための努力が必要。そして、自分が始めてみたことが、いろんな人が関わり合うことによって、何かおもしろいことに発展していく可能性を秘めている。続けている限り、なにかは起きるんです!」そう藤田さんはおっしゃっていました。


まちづくりは半径5m以内の人のことを喜ばせること


地域おこし協力隊の任期が終わった現在も、藤田さんは笠置町の空き家の活用を進めています。
また、地域で空き家の活用が進みづらい現状を変えるために、空き家の有効活用を図る社団法人を設立予定なのだそう。金銭を介さずに「物々交換」のようなイメージで、居住者の得意なことやスキルを家賃の代わりに提供してもらう仕組みを作ろうと考えていたりと、これからの活躍も楽しみです!

「京都市にいたら、147万人分の1でしかないが、笠置町にいたら1268人分の1の存在価値がある。都市部ではなく、農村部を選んでもらうために、”貨幣換算できない価値”や”働くことの価値”をどう創っていくかが今後の挑戦です。」と力強く語ってくださいました。
「まちづくりは半径5m以内の人のことを喜ばせること。人を喜ばせるのが好きだから、今の仕事が好き。働くことと住むこと、生きるってことは僕の中で近いんです。」
そう笑顔で話してくださる藤田さんが印象的でした。

今回の藤田さんのお話は、「”住む”とは何か?」という大きな問いから始まりました。
今回はこの問いから「自分にとって”住む”ために重要なこととは?」というテーマでグループごとに話し合いました。
仕事から家を考える人、暮らし方から家を考える人、ライフワークとして考える人など、みなさんそれぞれの価値観があり、とても考えさせられる話し合いとなりました。
「移住」することと「住む」ことは、切っても切り離せない関係です。
私自身も今回とてもいい機会になったので、「自分にとって”住む”とは何か?」という問いについて、移住を考えている方は一度時間をとってじっくり考えてみるのもおすすめです。

▶︎次回は京都ローカルはしご旅 Vol.5「半径500メートルを楽しむ、里山暮らしのはじめ方」ゲスト:前田 敦子さん(南丹市)】 お楽しみに!

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(文責・京都移住コンシェルジュ磯貝)

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