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移住者の声

夫婦の意見の違いも、子どもの転校も乗り越えたからこそ言える「移住してよかった」

 農家民宿 𫝆や 𫝆久保 達次さん・のぞみさん・月乃さん・テンちゃん

今回は、大阪府堺市から京都府綾部市へ移住した𫝆久保(いまくぼ)さんご家族にお話を伺いました。𫝆久保さんは4人家族。長女のもも乃さんが大学生、次女の月乃さんが中学2年生の時に移住しました。移住のタイミングでもも乃さんは一人暮らしを始め、次女の月乃さんは綾部市の中学校へ転校することに。はじめは達次さんだけが移住に前向きでしたが、3年経った今ではのぞみさんも月乃さんも綾部市の生活が好きだと笑顔で話してくれました。そしてそんな二人を嬉しそうに見守る達次さん。

「移住」という大きなイベントを乗り越えたのだから、きっとこれから何があっても私たちなら乗り越えて行ける。家族で問題解決していくためのヒントが、𫝆久保さん家族のお話の中には沢山詰まっています。移住当時の心情も交えながら、皆さんの今日までをたっぷりお話していただきました。

𫝆久保 達次さん・のぞみさん・月乃さん・テンちゃん
達次さんは奈良県出身、のぞみさんは大阪府出身。2020年春に大阪府堺市から移住し、2022年に農家民宿「𫝆や」を夫婦で開業。達次さんは移住前から子ども服のインターネット販売やWEBデザインの仕事を行っている。また、「自分で食べる分は自分で」という思いで米と野菜作りの時間を少しづつ増やしているところ。月乃さんは現在高校2年生。高校からチアダンス部に入り、全日本チアダンス選手権大会の決勝大会にも出場。「𫝆や」の看板犬・テンちゃんが綾部の大自然の中でのびのびと生活する様子はInstagramFacebookで要チェック。

娘の一言で思い出した、移住への憧れ


――𫝆久保さん家族が移住しようと思うようになったきっかけは?

達次さん:最初に移住を考えたのは、結婚前に妻とワーキングホリデーでニュージーランドを訪れた時でした。牧歌的な風景の中で自給自足に近い生活を知り憧れを抱くようになったんです。でも帰国して結婚し子育てをする中で、そんな気持ちもすっかり忘れてしまって…。
二人の娘も大きくなったある日、長女が「大学進学前に留学に行きたい」と言いだしたんです。それをきっかけにかつて自分たちが移住を夢見ていた気持ちを思い出しましたね。

――かつての気持ちを思い出して懐かしむだけの人が多いと思いますが、そこからどうやって移住への一歩を踏み出したんですか?

達次さん:完全に移住への想いが再熱して、資料を取り寄せて物件を探し始めました。私の本業であるデザイン業界はリモートワークができるので移住先でも仕事が続けられることもあり、構えすぎずに動き出せたのかもしれません。
あとは長女が留学に向けて書類を作る際、志望理由がなかなか書けなくて苦労しているのを見て父親として手本を見せたかったというのもありますね。

――移住先はどうして綾部市に?

達次さん:綾部市は空き家バンクの物件数が多かったんです。あとは堺市から日帰りで物件巡りができたのもポイントでした。一番最初に足を運んだ時からなんとなく「あ、ここがいいな」と思い、そこから3年間通いで物件を探しました。「移住立国あやべ」もかなり活用させてもらいましたよ。

――その頃のご家族のみなさんはどんな気持ちでしたか?

月乃さん:当時私は小学5年生で、一緒に内見に行く時は「自然の多いところに遊びに行く!」くらいの感じでした。ずっとマンション住まいだったから広いお家に住めると聞いた時はワクワクしましたね。
のぞみさん:私は移住に対してそこまで興味はなかったんです…。夫が熱心に移住に関する資料を取り寄せたりホームページを見ていても、最初の方は「なんかやってるなぁ」くらいに思ってました。

移住したいパパと移住に興味のないママ


――のぞみさんは移住に対して前向きではなかったんですね!

のぞみさん:そうなんです。夫は自然の多い奈良県出身、私はずっと大阪府の都会育ち。このまま都会暮らしでいいのにな、と思っていました。初めて内見で訪れた家は古すぎてびっくり!空き家バンクの補助金が使えたとしても、予算内でどれくらい綺麗になるのか全く想像できませんでした。

――達次さんはどうやって説得したんですか?

達次さん:説得はしませんでした(笑)。物件に対してここが嫌、あそこが嫌とネガティブなことばかり言って移住を阻止しようとしてくるので「無理して来なくていいよ」って言ってたよね。
のぞみさん:最初の方は本当に「二拠点生活にしていこうか」って話をしていたね(笑)。私にとってはやりたいことじゃないから不安しかないんですよね。そういう時ってなにもかもネガティブに捉えちゃう。内見に行ってもカビのにおいや古民家独特のにおいが気になることがあったけど、今の家はそのあたりが気にならなかったんです。

念願の物件に出会い、本格的に動き出した移住!
地域に馴染むための秘訣は?


――移住してから印象的だったことや、地域に馴染むために意識してきたことはありますか?

のぞみさん:もともとこちらに知り合いが居たわけではないので、自治会への参加や地域の取組には前向きに参加したいと思ってました。だからこそ、綾部市の移住定住サポートが手厚くてありがたかったです。自治会や地域の方への挨拶回りには、綾部市の職員さんが同行してくれるのですごく心強かったし、安心でした。
達次さん:私も妻と同じ理由で町の消防団に率先して入りました。消防団って40歳後半で辞めていかれる方が多いんです。なので地域の方々にも52歳で自主的に入ることを喜んでもらえて。消防団繋がりで知り合いがぐっと増えましたね。
あとはお互いの呼び方。年上年下関係なくニックネームでお互いを呼び合うようにしました。最初移住した頃、僕より年上の方が「私のことは”かよちゃん”って呼んでね」って言ってくれたんです。それなら僕のことは「たっちゃん」って呼んでくださいって感じで。
のぞみさん:私たちはもともとずっと敬語で話してしまうようなタイプで実は人見知り。でもこちらにきてからは新しいお付き合いの形をみなさんに教えてもらって「それでいいんや!」って切り替えられちゃいました(笑)。 年齢関係なく、フレンドリーにさせてもらってます。

——農家民宿は移住前からやることを決めていたんですか?

達次さん:”移住先でやりたいこと”のうちのひとつでした。都会の人たちに綾部市の素晴らしさを体験してほしいと思って。
のぞみさん:農家民宿は移住された方がやっていることが多いイメージがあったので、自分たちでもできるかもって思えたんです。

――実際にはじめてみて、どうでしたか?

達次さん:想像していたよりも海外の方が来てくれたり、とても楽しいですよ。ただ、食事の提供は妻に任せっきりなので、メニューを考えたりするのが大変そうですね…。
のぞみさん:お客さんの顔を見ればこんなご飯食べさせてあげたい、あんなこと伝えたいなって自然とできちゃうんですけどね。移住を考えている方も泊まりに来てくれるので、移住前の不安に共感したり、来てからの楽しさを伝えたり。色々お話ができて楽しいです!
月乃さん:マンションに住んでた頃だったら「晩御飯なんて気遣うし無理無理!」って感じだったのに、移住してからはパパもママもとってもフレンドリーになったよね。そんな二人をみていると、私もすごく嬉しい。

「移住なんかしなければよかったのに…」転校生の本音と葛藤


――月乃さんが綾部市に転校したのは中学2年生の時ですね。転校生として新しい学校に入ってどんな気持ちでしたか?

月乃さん:最初の頃は、都会の学校よりもみんなおとなしいなという印象でした。自分とはノリが違う気がしてしまって…。コロナで学級閉鎖になったりして初めの1年はあまり馴染めませんでした。
悩んでたけど、あるとき「自分のノリで楽しもう」と思うことにしたんです。気持ちを切り替えたら、無理に周りに合わせず自分なりに楽しめるようになっていきました。転校という経験を通してコミュニケーション力はだいぶ鍛えられたと思います…!
悩んでいた時は「パパのせいや、移住なんかしなければよかったのに」って思うこともあったけど、高校でチアダンス部に入れたのもここに来たからこそだと思ってます。今が楽しいので不満はなくなりました。

のぞみさん:中学校の先生とお話したときに、「月乃さんが転校してきてクラスが明るくなったんですよ、みんなすごく笑うようになりました」って言ってもらったことがあったんです。うれしかったですね。

達次さん:環境の変化でしんどいことがあることも心配しましたが、嫌なことにもしっかり向きあって乗り越えることで成長していって欲しいという想いもありました。信じていた通り娘は葛藤しながらも乗り越えてくれて、改めて移住してよかったと思ってます。

良いことも大変なことも経験したからこそ、みんなに伝えたい


――最後に改めて移住検討者さんに何かアドバイスがあったら教えてください。

のぞみさん:私は最初の不安な気持ちも、移住した後の楽しさもどちらも知っているからこそ、「まずは来てみて欲しい」って思うんです。私もこちらに来るまではあれこれ考えて不安になっていたけど、来てしまえば楽しめたひとりなので。
あとは、田舎でひっそり暮らしたくて移住を考える方もいるかと思いますが、そういう方に移住はあまりおすすめできません。田舎だからこそコミュニケーションは密になります。こちらに来てからは、なんだか親戚が増えたような気持ち。我が家にみんながご飯を食べに来てくれたり、食べにいったり。移住に前向きじゃなかった私が、今では一番楽しんでます!
達次さん:私自身、まずは一歩、二歩踏み出そうって意識して動いてきました。動かなければなにも変わりません。「移住」っていうとハードルが高いように感じてしまうので、「引越し」だと思うのがいいかもしれませんね。あまり構えすぎずに動いてみてはどうでしょうか。
あと大切なことをもう一つ。「補助金を使えば水回りは綺麗になる!」ですね(笑)。水回りが綺麗になればだいぶ生活しやすくなりますから。パートナーを説得しなきゃいけない方は参考にしてください。

――月乃さんからは、同じ年代で移住する子に何か伝えたいことがあればお願いします。

月乃さん:都会から田舎に引っ越すと何もかもが違うから、自分のあたりまえが通用しなくて嫌になったりするかも。でも、前と比べているだけではずっと辛いままだと思うんです。新鮮な気持ちで周りを見渡してみたら、田舎暮らしもいいところがたくさんありました!嫌だなって気持ちから楽しもうって気持ちに切り替えて、今を楽しんで欲しいな。自分が前向きになれば、なんでも楽しいよ!って伝えたいです。

【インタビュー後記】
𫝆久保さんご家族のお話に共通するのは、今日まで意識的に切り替えてきたということ。達次さんものぞみさんも元々は人見知りだったけれど、「郷に入れば郷に従う」で地域の皆さんとフレンドリーな関係を築き、移住に前向きでなかったのぞみさんは環境の変化を「毎日が新鮮で楽しい!」とポジティブに受け止めて、今ではその魅力を農家民宿で伝える側になっています。(なんと虫嫌いも畑仕事のおかげで克服しつつあるんだとか!)
きっとそんなお父さんお母さんを月乃さんは一番近くで見ていたからこそ、転校して馴染めない環境の中でも自分らしく楽しむように切り替えることができたのかな…と思い、お話を聞いていて胸がぐっと熱くなりました。「移住」だけに留まらない、生きていく上で大切なことを𫝆久保さん家族には教えてもらった気がします。
ちなみにインタビュー中は、看板犬・テンちゃんも「私も綾部の魅力を語るわよ」と言わんばかりにずっとテーブルに顔を乗せて参加してくれていました。農家民宿「𫝆や」はなんと犬同伴で宿泊することもできます!わんちゃん好きな方にもとってもおすすめです♩

(文責:京都移住コンシェルジュ 大西)

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