地域の課題をビジネスで解決!お米の新しい可能性と田舎の面白さ
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「匊 KOKU」 宮園ナオミさん(綾部市上林)
今回は京都府北部、綾部市の上林(かんばやし)地区にIターンで移住された宮園ナオミさんからお話を伺いました。
上林との運命的な出会いや、地域や学校の話、上林の水田を守るために立ち上げた「匊 KOKU(こく)」の裏話など、田舎暮らしと上林の魅力がたくさん詰まったお話をお聞きしてきました!
目次 ■ プロフィール □ 偶然と直感に導かれた、宮園さんの移住ストーリー ■ 学校も地域も、カルチャーショックを受けるくらいイイところ □ 地元上林のお米を使って、お米の新しい可能性を提案していきたい ■ もう都会では物足りない!
宮園ナオミさん
大阪生まれ大阪育ち。2009年に大阪から綾部市上林地区へ移住。自然食品の販売や料理教室、農家民宿など行う中で、2018年、iicome(イイカム)合同会社を起業し、お米のあらゆるカタチを提案するブランド「匊 KOKU」をスタート。上林の水田を守るため、上林地区の契約農家が栽培するお米を使った商品を展開。「京都グルテンフリー米粉事業」の一貫として、米粉を広く知ってもらうための基礎講座なども行う。
同じIターンで移住した女性4人と一緒に「かんばやしオーガニックビレッジ」を立ち上げたり、舞鶴市のホテルと「海と山のオーガニックマーケット」を企画したりと、幅広く活動。
3人のお子様と一緒に「自分で創り育てる」田舎暮らしを満喫中。
偶然と直感に導かれた、宮園さんの移住ストーリー
ーー綾部市の上林地区へ移住しようと思ったきっかけは?
宮園さん:綾部はもともと何の縁もゆかりもない場所だったのですが、たまたま若杉友子さんという野草料理で有名なおばあちゃんが、そのころ綾部市上林にいらっしゃって。その料理教室に通うために、大阪から毎月綾部まで通うことになったんです。ちょうど野草料理を学びたいなと思っていたときに、偶然若杉さんのことを人づてに聞いて、「これはすぐ行こう!」と。
当時は田舎への移住に興味はなかったのですが、初めて上林に入ったときに、「わ!ここ、気持ちいい!ここだ!!」と直感的に感じました。今まで田舎というと、山間部のどんより閉鎖したようなイメージが強かったんですが、上林に来た時は、スカッとすごく気分が晴れやかになって。
1〜2年くらいずっと大阪から通っているうちに、若杉さんの教えにも触発され、「自分で育て食べていける暮らしをしよう」と、上林への移住を決めました。
ーー仕事や家はどうされたんですか?
宮園さん:はじめは仕事も何も考えずに、とりあえず上林に来ること先決で、移住した感じです。もし考えていたら、ここに来ていなかったかもしれないです。
もともと、大阪で「粒々屋五彩」という屋号で雑穀料理のお店をやっていて、それをそのまま綾部に持ってきてはいたんですが、はじめは特に仕事があるわけでもなく。若杉さんの娘さんがいろいろとサポートしてくださって、手作り市やマルシェの出店に誘っていただき、そこで販売させてもらうところから始めていきました。
家も、若杉さんの娘さんにすごい勢いでお願いして、上林限定で探していただいて、今の家を紹介してもらいました。
ーーやはり移住先にサポートしてくれる方がいると、心強いですよね。
宮園さん:そうですね。もともとつながりができていたり、サポートしてくれる方がいらっしゃるのは心強いですね。
若杉さんの料理教室に、移住者の方も勉強しに来ていたので、そこで知り合って友達もでき、移住して来た時には、すでに友達がたくさんいる状態でした。さらにその友達からまた紹介してもらったりと、移住者同士でつながるのはすごく早かったです。困った時はなんでも教えてくれて、助けてくれる、みんなのおかげで今までなんとかやって来られました。
あと若杉さんや娘さんが「田舎に住むと、こういうところが違うよ〜」と、自治会のことや田舎での密な近所付き合いなど、都会とは違う部分や大変なことも、前もって教えてくれていたのも大きかったです。
ーー実際に移住してみてどうでしたか?
宮園さん:私はそういう話を事前に聞いて、「ちゃんと自分から地域に入っていこう」という心づもりで来ていたので、すんなり入ることができました。もちろん初めは少し警戒もされていたとは思うんですが、でもこちらから「入っていこう」という姿勢でいたら、相手も受け入れてくださいます。
それに、上林は地域の方の受入れ口が広く、とてもウェルカムムードだったので!上林には、外から来た人にも、みんなが温かく受け入れてくれる空気があります。
学校も地域も、カルチャーショックを受けるくらいイイところ
ーー宮園さんは3人のお子様もいらっしゃいますよね。上林での子育てや学校はどうですか?
宮園さん:今、4歳、7歳、10歳なんですが、うちの子どもが通っているのは、上林小中一貫校で、1年生〜9年生まで全員で43人くらい。小さな学校ですが、でもその分、先生と保護者がなんでも話し合える、ものすごくいい関係ができています。先生も悩みなど全部受け入れてくれて、一人一人の子どもを大切に、とても濃い対応をしてくださっています。
今いる学校の子たちの半分以上は移住してきた子なんじゃないかな。みんな受け入れ態勢ができているので、移住者の方も入りやすいし、馴染みやすい環境ができていると思います。
それから、1年生から上級生まで、みんなすごく仲が良いんです。大きな学校だと、遊ぶのは同じ学年やクラスだけになると思うんですが、ここでは、学年やクラス関係なく、みんなでサッカーをしたり、教えあったり。
上級生が下級生を見る癖がついてるので、新しい子が入ってきたときは、上の学年の子が新しい子の面倒をみてくれます。自分たちもお兄ちゃんお姉ちゃんに教えてもらっているので、大きくなったら自然と下の子の面倒をみたいみたいで。
ーーひとりっ子の家庭でも、そういう環境にあったらお兄ちゃんお姉ちゃんがたくさんできますね!
宮園さん:そうなんです!みんなすごくいい子どもたちで、通学していても、必ず挨拶してくれます。いつも「ただいま〜」とか「行ってきま〜す」とか地域みんなで声をかけ合っています。
地元のおじいちゃんおばあちゃんも、すごく可愛がってくれますよ。
ーーおじいちゃんおばあちゃんもたくさんですね!
宮園さん:ほんともうたくさん!大家族みたいな!
困っているときも、地域の方みんなで見てくれているので、なんとかなる心強さがあります。
今年は米の収穫を天日干しする余裕がなく、稲刈りをどうしようか迷っていたのですが、近所の方が使わなくなったコンバインを譲ってくださり、村の米乾燥機など農機を快く貸してくださいました。お陰で無事に1年分のお米を収穫することができ、とても助かりました。
田舎は助け合いで、つねひごろから、川や山、田園の整備をしたりしているので、また大阪にいたときとは違う人付き合いがあります。
ーー子どもにとっても、そういうつながりや関係ができることは、田舎暮らしのいいところですよね。
宮園さん:学校では、地元のおじいちゃんおばあちゃんが「ふるさと先生」となって、地域の歴史や自然、昔ながらの知恵や生き方を教えてくれる地域学習も行われています。
先日うちの子も、水源の里 古屋(※1)という集落で、「ふるさと先生」に教えてもらいながら、トチの実拾いをしていました。トチの実も拾うだけじゃなくて、食べるためのアク抜きの仕方までちゃんと教えてもらって。そのトチの実で、最後みんなで餅つきをして、トチ餅とぜんざいを食べる会もあるんですよ。
他にも、山吹を刈ったり、梅の収穫や、田植え体験、高学年になると水質調査をしたりと、地域を学べる授業がたくさん。子どもたちは「ふるさと先生」に学びながら、地域の良さを子どもの頃から体感できる環境にいます。
さらに授業を通して、おじいちゃんやおばあちゃんとの対話から、自分で考える力がついているように感じます。古屋は限界集落なのですが、トチの実拾いだけではなく、「どうやってこれから村を守っていくか」を子どもたちも自分たちで考えたりしています。
うちの長男も、森林を破壊しながら工場が建っているのを見たりすると、「自然の中にこんなの作ったらあかん!」と言ったりするんですよ。
(※1 綾部市北東部に位置する集落。京都丹波高原国定公園に指定されており、トチの木の群生地として有名。)
ーー地域の方との交流から、子どもたちもたくさんのことを吸収して学んでるんですね。
宮園さん:ほんとに地元の方との関係が深い地域で、「都会にいたら考えられないな」と、こっちに来てから感動ばかりしてます。
「ふるさと先生」の授業で学んだことを各学年ごとに文化祭で発表するんですが、その文化祭に、親だけじゃなく、地元の方もみんな来てくれるんです。地元のおじいちゃんおばあちゃんも、見るのを楽しみにしていて。子どもたちも「ふるさと先生」が来てくれたら、やりがいもできるし嬉しいですし。
運動会も2年に1回は地域の方と一緒にしているんです。地域の方みんな来てくれて、子どもたちのことを応援してくれて。地区別のリレーもあったりして、70、80歳の方も走っているんですよ。初めて参加した時はビックリしました!
学校も地域みんなを大事にしてくれるし、地域のみなさんもその分、学校や子どもたちを大事にしてくれています。
宮園さん:実は上林小中一貫校は、5年前に別々だった小学校と中学校を一緒にして、ピカピカに建て替えたばかりなんです。プールも体育館も校舎も全部ピカピカ。木で出来たとてもかわいい学校ですよ。スクールバスも出てるんですけど、もっと離れたところに住んでると、贅沢なことにタクシー通学になるんです。
そういう意味でも、ものすごく環境は整っていて恵まれているなと思ってます。
地域に学校がなくなると、地域力って一気にすごく落ちてしまうんです。市もお金をかけて学校を建て替えてくれたので、今ある学校をうまく守りながら存続していけるように、今後も活動していきたいと思っています。
学校も地域も、カルチャーショックを受けたくらいいいところなので、子育て世代の方にも、ぜひ綾部市上林への移住に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
地元上林のお米を使って、お米の新しい可能性を提案していきたい
ーーiicome合同会社を設立された経緯を教えていただけますか?
宮園さん:もともと「粒々屋五彩」では雑穀料理を教えていたのですが、この地域にずっと住んでいるうちに、地域の特産物でもある「お米」を使って何かしたいと思うようになって。
田んぼが空いて荒れていく姿をここ数年見続け、農家が育たず後継者に悩む地域を目の当たりにして、地域の存続の危機をものすごく感じるようになりました。
そういう現状をなんとかいい方向に循環させるには、地元の田んぼを上手く活用して、それをビジネスにしていくことが1番なんじゃないかなと思って。そのときに「お米だ!」と、パッとひらめきました。
田舎を見ていて「何が足らないのか」を考えてみると、結局経済力だと思うんです。お金が循環していない、回っていないこと。だから、お米をどんどん消費して需要を増やすことで、農家さんが安心してお米を作れるようになって、経済も循環出来たら、きっと新しい人を地域に呼び込むことにもつながる!これはとにかく形にしようと思ってやり始めました。
ーーKOKUでは、米粉を使ったユニークな商品が特徴的ですが、どうしてお米の中でも、「米粉」に着目されたんですか?
宮園さん:たまたまその頃、私が米粉の研究をしていたのがきっかけです。
米粉を知って研究し始めてから、私自身、気づいたら小麦粉を一切使わなくなっていたんです。なんでも米粉で代用できていたので。小麦製品って身の回りにたくさんあると思うんですが、それを全部小麦じゃなくて米粉で代用できると考えたら、いろいろなビジネスを展開できる可能性を感じました。
米粉って奥が深くて、お米の品種選びから製粉の仕方次第で、食感や風味も変わってきます。技術も進化していて、今までの米粉ではできなかった食感や風味を出すこともできるようになっています。米粉を使って、「KOKU」でお米の新しい可能性、楽しみ方を提案していくことで、お米をもっとたくさんの人に使ってもらいたいと思っています。
日本全体で見ても、小麦の自給率は13%前後と低くて、ほとんど海外から輸入してるんですが、お米はほぼ100%国内で自給できています。米粉を使う方が増えることで、日本の食料自給率の改善にもつながってくれるのではないかと考えています。
さらに、私自身グルテンフリーの生活を続けているうちに、子供の頃から悩んでいた花粉症も、気付いたら治っていたり、体調がよくなっていたりして。お米は体にとってもいいことづくしなんです!
もう都会では物足りない!
ーー移住希望の方へ何かメッセージをお願いします!
宮園さん:移住したいと思ったら、まずは現地に行って地域の人の話を聞くことが大事です。この辺りだと農家民宿やゲストハウスをやってる移住者の方もたくさんいるので、何泊か泊まって、現地の人の実際の話をじっくり聞いて、「この地域はこういうところなんだな」というのを探りながら、自分に合うところを見つけるのがいいのかなと思います。
あと、いいところばかりじゃなくて、悪いところもいっぱい聞いておいたほうがいいです!私も移住する前にちゃんと聞くことができて、知った上で来れたのは、すごくよかったなと思っているので。
ーー今日お話を聞かせてもらって、KOKUだけじゃなく、「かんばやしオーガニックビレッジ」や「海と山のオーガニックマーケット」など、さまざまな活動をされている宮園さんの行動力には、本当に驚かされました!
宮園さん:私がよく例えていうのは、田舎は真っ白なスケッチブックみたいなんです。だから、そこにどう色付けしていくかは自分次第。
都会では、特に自分がクリエイティブなことをしなくても、お金があればなんでもあるんですけど、田舎の場合は、自分が楽しもうとするためには、自分で色付けして描いていく必要があります。余白がある分、「なんでも自分で作っていく」というクリエイティブさを楽しめるのは、田舎ならではの醍醐味ですし、ものすごくやりがいもあります。
私も都会にいたときには、自分にもこれだけの行動力やクリエイティビティがあることを全く想像できていなかったです。都会の既製品の中で暮らすのも、それはそれですごく楽しかったのですが、「自分が何かをしたい」というより「どこに勤めたい」「こんな部署がいいな」など人に委ねた選択肢や思考回路が中心でした。それが田舎に来てみて、自分自身すごく変われて。そうなると今度はもう「都会では物足りない!」となってしまう。
とりあえずチャレンジできて、失敗もある程度許してもらえる。成功も失敗も繰り返しながら、人生どろんこになりながら遊んでる感じ。それが田舎暮らし。
今、私は多分、子どもの頃と同じくらいの精神力で、子どもの時もこんなに好奇心があったかなってくらい、好奇心いっぱいで。まだまだいろいろなことにチャレンジしていきたいです!
「もう都会では物足りない!」という言葉が物語っているように、田舎暮らしを心の底から楽しんでいる宮園さん。地域で暮らす中で見つけた課題を、新しい仕事を生み出しながら解決しようとされている姿は、本当に輝いていました。移住してから、自分の新しい一面を発見したと宮園さんがおっしゃっていたように、みなさんも田舎への移住を通して、新しい自分に出会えるかもしれないですよ。
▶︎宮園さんに会ってみたい方は
綾部市上林にあるKOKUの実店舗へ。「事前にメールでご連絡くだされば、ぜひいつでもお越しください!」とおっしゃっていました。もちろん移住相談も。宮園さんを通して移住された方も何人もいらっしゃいます。料理教室やワークショップも随時開催されているそうですよ!▶︎KOKU オンラインショップ
実店舗へは足を運べないという方は、ぜひ一度、KOKUの商品を楽しんでみてください。私も実際に食べてみてびっくりしましたが、今までの米粉のイメージがくつがえります。”お米の新しい可能性”を感じてみてください!あわせて読みたい
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(文責:京都移住コンシェルジュ 磯貝)