宇治田原町Iターン起業里山子育て

自然と人の豊かさで育む「森のようちえん」。移住して叶える「やりたいこと」

2021.02.11

「里山保育やまぼうし」若林武さん・純さん(宇治田原町)

今回は京都府南部、宇治田原町にIターンで移住された若林武さん・純さんからお話を伺いました。
宇治田原町へ移住されて、ずっとやりたいと思っていた森のようちえん「里山保育やまぼうし」を始めた若林さんご夫妻。昔ながらの暮らしを楽しむ里山ライフや、「森のようちえん(※1)」の起業ストーリー、そしてこれからの展望など、「やりたいことを叶えたい」方へのヒントがたくさん詰まったお話をお伺いしてきました!

(※1 自然体験活動を基軸にした子育て・保育、乳児・幼少期教育の総称。「森のようちえん全国ネットワーク」から引用)

目次
■ プロフィール
□ 昔ながらの暮らしを楽しむ、宇治田原町での里山ライフ
■ 二人三脚で歩んできた「森のようちえん」の今までとこれから
□ 「やりたいことがあるなら、やるしかない!」

若林武さん(写真左)・純さん(写真右)・あおいちゃん(長女)・きくちゃん(次女)・ふきちゃん(三女)
2017年、宇治市から宇治田原町へ移住。武さんは大阪市出身。純さんは岐阜市出身。ご夫婦ともに保育士の資格を持っており、自然の中で子どもの人間性を育む”森のようちえん”「里山保育やまぼうし」を2018年に開園。
娘3人と一緒に家族5人で、「やりたいこと」を叶えながら、自然や人の豊かさを楽しむ”田舎暮らし”を満喫中。


昔ながらの暮らしを楽しむ、宇治田原町での里山ライフ


ーー結婚を機に宇治市に移り住まれたそうですが、その後、どのように宇治田原町への移住を決められたのでしょうか?

武さん:僕は大阪の北新地という都会で育ったのですが、中学生くらいから田舎暮らしに憧れを抱くようになり、ゆくゆくは田舎暮らしをしてみたいとずっと思っていました。お互いの実家にほどよく近い京都で、「宇治」という響きに惹かれて、結婚を機に宇治市に引っ越しましたが、宇治市は思っていたほど田舎ではなくて。子どもも生まれ、もっと自然豊かな場所で暮らしたいなと考えていました。

そんなとき、仕事の関係で宇治田原町に来ることが何度かあり、「すごくいいとこやな」と。当時はまだ空き家バンクも開設されていなくて、いい家が見つからず困っていたんですが、たまたま知人に宇治田原町出身の方がいて、この家を紹介してもらいました。一目惚れでしたね。

▲玄関から裏庭に抜ける通り土間が気に入ったというお家。長野の職人さんが手作りした国産の薪ストーブや木のお風呂など、若林さんご夫妻のこだわりが詰まっています。

ーー実際に移住されてみてどうでしたか?

純さん:お隣さんがすごく優しくて、よくしていただいていて、うちの娘たちのことを孫のように可愛がってくれています。実家は少し離れているけど、おじいちゃんおばあちゃんの役割をしてくれる方が近くにいるのは、とても心強いですね。

お野菜もお裾分けしていただいたり、家の近くを子どもたちと一緒にお散歩するときも、必ず声をかけてくださったりと、ご近所の方には感謝しています。

ーーこの地域のお祭りや行事などは、どのようなものがあるんですか?

武さん:夏祭りと秋祭りがあって、夏はみんなで盆踊り、秋は神社に男性が集まって、ワイワイ飲み食いするというお祭りがあります。
他にも、この辺りは家の蛇口から山水が出るんですが、その整備に年に一度、みんなで山に行って綺麗に掃除したり。どれも面白いですよ。

純さん:ほんと、面白いですね。地域で昔から受け継がれてきた伝統や、昔のままの暮らしが、今もまだ多く残っているんです。
例えば、灯籠を家から家へ、順番に回していくというものがあるんです。愛宕さん(※2)の神事みたいなんですけど。お隣から回ってきた灯籠を祠のようなところに持って行って、新しいものと入れ替えて、ろうそくに火をつけて、またお隣さんに持っていくという。子どもたちも一緒に連れて行ったりして、楽しんでいます。

武さん:新年には、地域の人が集まって、巨大なしめ縄を編んで飾る伝統行事もあるんですが、これも面白いんです。

(※2 愛宕神社。古くより火伏・防火に霊験のある神社として知られている。)

ーーとても楽しんでいらっしゃるんですね。逆に困ったことや苦労したことなどはありますか?

純さん:特にないですね。あまり不便さとかも感じていないですし、買い物なども、車さえあれば。

武さん:地域の行事や日役(※3)などもいくつかありますが、負担になる程の量ではないですし、すごく楽しんでやらせてもらっています。

(※3 集落に住む人が集まって行う作業のこと。例えば、地域の水路の掃除など「自分たちの集落は自分たちで整備する」という大切な自治活動。)

ーー移住されてから新しく始められたことはありますか?

武さん:いろいろありますが、今年から新しく田んぼを借りて米作りも始めました。もともとこの家に住んでいた方の田んぼだったみたいで。お隣さんが助言してくださって、お借りすることができました。
今年は自分たちで餅米を作って、みんなでお餅つきをしたりもしたんですよ!

純さん:「昭和初期みたいな暮らしがしたいね」と2人で話しているんです。

▲田んぼをやると藁も自前で用意できるようになり、今年は、お正月のしめ縄を「里山保育やまぼうし」の子どもたちと一緒に作ったのだとか。お母さんたちも「買わなくても、何でも自分たちで作れるんだ!」と喜んで作ってくれたのだそう。


二人三脚で歩んできた「森のようちえん」の今までとこれから


ーーいつ頃から「森のようちえんをやりたいな」と考えていたんですか?

武さん:宇治市に住んでいるときに、森のようちえんの研修に行かせてもらって。そこで見た子どもたちの姿がすごくいきいきとしていて、「こういう保育がしたいな」と強く感じました。

ただ、まだそのときは、実際にやれるのかどうか、いつ頃やれるかなど、具体的なことは何も決まっていなくて、ただ漠然と「やりたいな」と思っているような状態でした。

純さん:ちょうど夫が研修に行って「森のようちえんをやりたい」と思っていた時期と、宇治田原町への移住が重なったんです。今まで具体的ではなかった想いが、「宇治田原だったら、自然もたくさんあるし、森のようちえんができそう!」と、タイミングぴったりで。

私もちょうど、職場復帰して保育士として仕事をする中で、「やっぱり自分のやりたい保育をやりたいな」と思ったタイミングでもありました。

武さん:ちょうど2人がやる気になっていた時期も重なったんです。さらに、「長女が年少になる時にはできたらいいね」と話していたんですが、ちょうどそのタイミングでもあって。

純さん:こういうきっかけが重なっていなかったら、私は不安で動き出せなかったんじゃないかなと思います。

▲森のようちえん「里山保育やまぼうし 」にて、自然の中での絵本の読み聞かせ。さっきまで走り回っていた子どもたちも、夢中で聞いています。

ーーいろいろなタイミングがぴったりだったんですね!実際に「里山保育やまぼうし」をスタートされたのは、いつ頃ですか?

純さん:宇治田原に2017年3月に引っ越してきて、5月にはもう「やまぼうし」としておさんぽ会を始めていました。そして、その翌年2018年4月から森のようちえん「里山保育やまぼうし」を本格的にスタートしました。

最初の頃のおさんぽ会は、知人や友達が来てくれたり、こじんまりとアットホームに、月に1~2回くらいの頻度で行っていました。秋頃から週3日平日にやるようになって。

武さん:僕はまだその頃は、障害者支援施設に勤めに行っていました。
2018年度からは僕も仕事を辞めて、平日5日間の預かりをスタートさせたんです。最初は子ども3人からのスタートでしたね。

でも、完全に仕事を辞めるのはまだ少し怖かったので、初めの頃は土日のどちらかは前の職場でバイトとして働かせてもらいながら。

▲今「やまぼうし」には、若林さんご夫妻以外にスタッフが2人、来年はもう1人増えるそうです。「子どもと純粋に楽しんでくれたり、すごく素直に受け止めてくださる、本当に素晴らしい方々です。」と話す武さんと純さん。

ーー「やまぼうし」に通っている子どもたちの親とも、とてもいい関係を築かれていますよね。

純さん:子どもが卒園したりしても、「継続して関わりたい!応援したい!」と思ってくれるお母さん方が、やまぼうしの「応援隊」を作ってくださって。経営を助けるために何かいい手段はないかとか、田んぼを手伝ってくれたりだとか、すごく協力的に動いてくださっています。

武さん:一応畑もやっているんですけど、僕たちちょっと下手で、全然できなくて(笑)。でも畑も、そういうのが好きなお母さん方が苗を持ってきて手伝ってくれたりして。ほんといろいろなところで助けてもらってますね。

あと、子どもたちを見ていて思うのですが、自分の親だけじゃなく、他の子の親に対する信頼度もすごく高いんです。子どもたちが、自分の親ではない大人に甘えられるのは、すごくいいなと、見ていて感じますね。

▲焚き火で焼いたソーセージを美味しそうに頬張る「やまぼうし」の子どもたち。子どもたちのいきいきとした姿が印象的で、私も一緒に楽しく遊ばせていただきました!

ーー自分が子育てするときに「やまぼうし」のような森のようちえんがあったらいいなと、今日一緒に過ごさせてもらい感じました。地域の方も、喜んでくれたのではないですか?

純さん:地元の方が通ってくださるのには少し時間がかかるみたいで、今来てくれている子たちは、ほとんどが町外からです。
はるばる通ってでも行きたいと思ってくれる方が来てくれているので、遠方から来る方が多いんですが、やっと今年初めて、宇治田原町内で入園を決めてくださった方がいました。

武さん:町内の方は周りにすでに自然があるから、わざわざお金を払ってまで..と思うのかな。

保育園と幼稚園があっても、どちらかに行くのが当たり前になっていて、他の選択肢を入れるというのが、まだもっともっと先なのかなって。「森のようちえんって何なんやろ?」と、まだまだ得体の知れなさはあるのかなと思っています。

純さん:もう少し「当たり前になりたいな」と思ってますね、ずっと。園を選ぶときに、幼稚園があって保育所があって、ここもあるよって。町内でも、この園が当たり前に存在するようになったらいいなと思っています。

武さん:でも町内の方でも、ご近所さんや年配の方たちは、昔自分たちがそういう遊びをしていたからこそ、「すごくいいね」と言ってくださいます。

▲「やまぼうし」のこの日のおやつは、焚き火で焼きマシュマロ。

▲「マシュマロ焼くよ〜!」と声をかけると、みんな思い思いの枝を山から拾ってきて、焼き始めます。

ーー今後やっていきたいことはありますか?

武さん:「小学部をやってみたいな」と思っています。今も「にちようの森(にち森)」と言って、日曜日に小学生の子たちと遊んでいるんですが、やっぱり平日5日間やってみたいなというのがあって。

小学生ってすごく面白いんですよ。それに、にち森に来ている小学生たちが、ここでストレスを発散しているのを見ると、「すごくエネルギーが有り余っているのに、何時間も座って勉強しているのはもったいないな」と思っちゃって、やりたくなってしまうんです。

もし長女が小学校に行って「なんか違うな」と思ったら、やってるかもしれないですね(笑)。それをきっかけに「やるしかない!」と。

純さん:やらざるを得ない状況というか、今回も「やるしかない」みたいな時が来るのかなと、思ってます。

武さん:今はまだ願望だけど、あとはタイミングだけかな、と。

純さん:あと、森のようちえんの認知度を上げるというよりも「こういうふうに子どもを見たら楽しいよ」というのが、もっと広まったらいいなと思っていて。もっと、子どもの可能性を広げられるような保育が広まったら嬉しいなと、情報発信にも力を入れています。

ーー「森のようちえんってどんなとこ?もっと知りたい!」という方には?

武さん:里山保育やまぼうしのブログにある「森のようちえんを徹底解説」を読んでもらえれば!少し長いけど(笑)。でも、想いを込めて、丁寧に、森のようちえんのことや僕たちの想いが分かるような記事を書いているので、ぜひご興味がある方は読んでいただきたいです。

事前に連絡をいただければ、「里山保育やまぼうし」の体験や見学もしていただけますよ。


「やりたいことがあるなら、やるしかない!」


ーー若林さんご夫妻のように何かやりたいことがあっても、なかなか一歩を踏み出せない方も多いと思うのですが、先輩としてメッセージはありますか?

武さん:「やってみろ!」その一言ですね。やりたいなら、やるしかないです。

純さん:私はどちらかというと不安に陥りやすいタイプなので、「本当に大丈夫かな、大丈夫かな」と思うんですが、夫は「ダメやったら、ダメやったときに考えればいいやん」という生き方をずっとしてきている人なので。私はそこに乗っかっただけ。

武さん:「やりたかったらやったらいいやん!」「やらんのは、まあ、そんなにやりたくないんじゃないのかな」と思ったりします。そんなに単純な話ではないのかもしれないですが。

ーーお子様がいると、お金の問題などでスピードダウンしちゃう方もいるんじゃないかと思うのですが、若林さんはどうでしたか?

武さん:僕は「大丈夫やろ、なんとかなるやろ」と思うタイプなので、お金の心配とかも、とりあえずやってみてから考えようという感じで。

純さん:私はすっごく心配で、特にお金は1番心配で。なんか目をつぶってバンジージャンプを飛ぶような感じです、いつも(笑)。

武さん:来年やっと10名来てくれるので大丈夫ですが、もしまだ少ないままだったら、また働きに出ようかなとは、足りなかったらバイトするくらいの気持ちは持っていました。

森のようちえんをやっていないことの方が想像できないし、絶対後悔するので。
とにかく、「覚悟を決めろ!」ということですね!

ーー最後に、移住を考えている方へも一言お願いします!

純さん:私がどこかで見た文章にも書いてあったのですが、「どこへ行っても、楽しめる人は楽しめるし、楽しめない人は楽しめない。」のかなと。

ある例え話で
「このまちはいいまちですか」とおじいさんに聞いた人に
「あなたの住んでるまちはどうですか」とおじいさんが聞き返すと
「最悪なまちなんですよ、だから引っ越したいんです」と。
でもその人は、引っ越しても「ここも最悪なんです」と言ったそうです。

また別の人がおじいさんに聞いて、おじいさんが聞き返すと、
「いいまちですよ」と返しをした人は、
新しい場所でも「ここもいいまちでした」と答えたのだとか。

どんな場所でも、巡り合って楽しめる人は、どこに住んでもきっと、楽しめるんだと思います。だから、楽しめるかどうか、というのが大切であって、土地の問題じゃないんですよね、その人自身の問題だと思うんです。
「あなたは今どうですか?」と自分に聞き返してみてほしいです。

だから私も「誠実に生きていこう」と、森のようちえんを経営していて、つくづく思います。
こうやって、いいお母さんがたくさん集まってきてくれて、協力してくれる方がいっぱい集まってきてくれている。もう誠意で返すしかないねって。

武さん:常々言ってるよね。

純さん:多分田舎暮らしもそうなんだろうなと。何事にもありがたいと感謝して、「住まわしてもらうだけでありがたい」と思うことが、まずは大切なんじゃないかなと。でも時々は息抜きもしながら。
「まだまだ未熟だな」と思うことがいっぱいあるからこそ。

武さん:うん、反省もしながらね。感謝して、楽しむ!


しっかりとした信念と柔軟性をあわせもつ若林さんご夫妻の言葉は、心に響くものばかり。「やりたいことがあるなら、やってみよう」「感謝しながら、楽しむ」当たり前のことのようで、実は簡単にはできないことを体現しているからこそ、説得力があるのかもしれません。

「やりたいこと」を叶えるのは、簡単なことではないと思います。でも、若林さんご夫妻からのメッセージを胸に、ぜひみなさんも新しい一歩を踏み出してみてくださいね。

▶︎森のようちえん「里山保育やまぼうし」HP
「やまぼうし」へのお問い合わせ、体験や見学などのご連絡はこちらからどうぞ!「子どもを自然の中でのびのびと育てたい」と思っている方、ぜひ若林さんにコンタクトを取ってみてくださいね。スタッフ紹介や保育料などの詳細も、こちらからご覧いただけます。

▶︎「里山保育園やまぼうし」のブログ
「森のようちえんのことをもっと詳しく知りたい!」という方は、武さんが想いを込めて書いた「森のようちえん徹底解剖」をぜひ読んでみてください。「活動日誌」は毎日更新されています!

▶︎宇治田原町移住サイト「うじたわらいく」
「宇治田原町が気になる!」「宇治田原町への移住を考えている」という方は、こちらをご覧ください。若林さんご夫妻へのインタビュー記事など、宇治田原町へ移住された方々へのインタビュー記事もご覧いただけます。

(文責:京都移住コンシェルジュ 磯貝)