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移住者の声

子どもたちも海が好きに

 余裕がない毎日から一転

「常に親が一緒にいられる。子どもを育てる環境としては文句なしだと思いますよ。」

そう言って満面の笑顔を浮かべるのは、京都府北部の伊根町蒲入にある水産会社で漁師として働く菱田誠さん。父親に似て海が大好きだという息子の慶次郎くん、奥様の江里子さんと一緒に写真を撮影する時の和やかな笑顔がとても印象的です。それでも、移住前はそんな笑顔を見せる余裕は皆無だったとか。

菱田さん夫妻がこの地に移住してきたのは1998年。それまでは京都市内に住み、誠さんはアパレル系会社の本部長職というバリバリのサラリーマンとして、ほとんど休みなく朝から晩まで働きづめの毎日を送っていたそうです。

「妻も一緒の会社で働いてたんですが、移住前に子どもはいなかった。正直、子育ての“子”の字も想像できないくらい忙しくて。仕事はやりがいもあったし楽しかったけど、昇進するにつれて大変さがどんどん増してきて…。」

と、仕事に対し徐々に矛盾を感じ始めていたと当時を振り返ります。

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そんなある日、ふと目に留まった求人誌で漁師の求人を見つけます。

「漁師って代々の継承や地元の人がなるもんだと思っていたから、驚きました。」

と、誠さん。漁業への就業に期待を抱き始めた頃、偶然知り合いから水産会社を紹介してもらえることに。それをきっかけに、マイホームや将来の子育てなどについて改めて考え、奥様の後押しもあって、ついに決断。

「昔はネットもそんなに普及していないし、情報が圧倒的に少ない。選択肢がなかったんですよ。」

と経緯を語ります。そうして紹介を受けた伊根町の水産会社へ転職を果たしました。

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頼れる人を作る

サラリーマンから漁師への転職に苦労がなかったかどうかを伺うと、

「もちろん、仕事は一からのスタート。海のことをはじめ、船で使う道具とか何にも分かりません。でも、当時の上司(現社長)が稀に見るすごく良い方で、色々と世話になって。あの人がいなかったら続いてなかったかもしれない。移住を決めるとき、身近に頼りになる人を作れるかはすごく重要だと思いますね。」

と語ってくれました。そして、伊根町での生活を送る中、二人のお子さんも誕生。

「家の目の前が海。会社もすぐそばにあって、親が働く姿を間近に見せられるのは子どもの教育にも良かった。休みの日は子どもと一緒に釣りをしたり。転職前には考えられない生活ですね。」

もちろん、良いことづくめというわけでもありません。

「漁師の仕事は季節や天候に左右されやすい。正直、収入はぐんと下がりましたね。ビールから第3のビールに格下げになりました(笑)。でも、精神面や健康面を思うと移住前とは比べ物にならないですね。」

と誠さんは話します。職を変えることで得た、かけがえのない生活。頼れる恩人との出会いや奥様の後押しがあったとはいえ、誠さん自身の大きな決断を経てこその結果でもありました。

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移住は、家族みんなの生活を巻き込む、人生の大きな選択です。その一歩を踏み出すことに、臆病になってしまうこともあるかもしれません。そんなとき、家族の理解はもちろん、誠さんのように頼れる恩人との出会いが支えとなることも。時には人に頼ることで、勇気ある一歩を踏み出せるのかもしれません。

都会にはないものがそこにある

都会で働いていると、高層ビルが空を覆ってしまっていて、小さな空を眺めることが少なくありません。会社までの道のりで出会うのは、たくさんの人、たくさんの車。どこか窮屈さを感じながら生活が進んでいく。そんな想いを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。子どもにも、もしかしたら窮屈な思いをさせているのかもしれない。子育てのために田舎で暮らすことを選択したい。だけど、どういった子育てになるのかが不安で踏み出せない方も多くいらっしゃいます。

地域での子育ては空気も澄んだ、広々とした自然の中、子どもたちが駆け回ることができます。満点の星を仰いだり、雪を踏みしめたり、刻々と表情を変える風景に驚きながら生活をする。見たことのない昆虫や鳥など、たくさんの生き物に触れることは子どもの五感を刺激します。

田舎ではご近所の方とのお付き合いが都会に比べ密接なため、手が離せないときに子どもを見てもらうというお話も良く聞きます。今や、「核家族」が当たり前で、隣近所の交流は少ない街が多いなか、田舎には新しい家族の形の可能性があるのかもしれません。人も自然もあたたかい、その懐に思い切って飛び込んでみてはいかがでしょうか。

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