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移住者の声

地元の海で漁師の道へ

地元である宮津へのUターン

京都府北部の名所、天橋立がある宮津市で漁師として働く本藤靖さん。出身地であるこの場所に定住しようと決めて戻ってきたと言います。それまでは漁師とは違った、海に関わる別の仕事に従事し、仕事柄、日本各地を転々としていました。宮津へのUターンを決めたきっかけについて、靖さんは次のように話します。

「母が高齢でしたし、子どもたちも転校を繰り返していて可哀相で。私自身も仕事が多忙で、限界に近づいていたんです。けれど、漁師への転職には自信がありました。代々漁師の家系で、生まれも育ちも海。前職も海に関わる仕事だったので知識もある。それで、亡くなった父親の漁業権を譲り受けて漁師としての生活をスタートしたんです。」

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慣れ親しんだ地元へのUターン。地域にもすぐに馴染めたのかどうかを尋ねると、そう簡単なものでもなかったそうです。

「地元出身とはいえ、長い間、外に出ていた人間です。なるべく早く地域に溶け込むためにも努力は必要でした。それに、いくら海や魚介類のことに知識があるといっても、漁業を1から10まで、全てできる人なんて、そうそういるもんじゃない。誰かに教えてもらわなくちゃいけないんです。ありがたいことに、自分には漁の師匠になってくれる方がいて手取り足取り教えてくれました。」

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宮津の海をそのままの姿で

毎日のように海に出て、宮津湾沖での漁やとり貝の養殖などに励む靖さん。地元の海に戻ってきた時、あることに驚いたそうです。

「昔と今では海が違う。目に見えて魚が減っているんですよ。田舎は農業や漁業など一次産業がメイン。毎日漁に出て魚を獲ることは大事なんですが、一度獲った魚は戻らない。乱獲を繰り返すと、今はいいかもしれないけどその先はもうない。」

と、靖さんは語気を強めます。そこで、地元の方たちと連携し、「獲るだけでなく育てる海」を目指して活動を始めました。

「自分の原風景である宮津の海が、ずっとそのままの姿でいてほしいんです。」

Uターンしてきた者だからこそ強く感じた地域の変わりようが、靖さんの行動の動機となり、ひいては次の地域を支える原動力となっています。漁師として生計を立てながらも、地域の未来を見据えて時間を費やす靖さん。今後も残していきたい宮津の魅力はどんなところにあるのでしょうか。

「宮津湾は栄養豊富な海のため魚の種類が多く、天然の牡蠣も獲れる。景色も抜群に素晴らしくて、一日中見ていられますよ。観光名所である天橋立の存在も大きい。また、最近では観光客に漁業体験をしてもらうなど、いろんなことにチャレンジしています。なにより子どもたちがのびのびと育っているのを見ると、本当に一念発起して、ここに戻ってきて良かったと思っています。」

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最後に、これから移住を考えている方へのアドバイスを伺ってみると、こんな答えが返ってきました。

「まずは、住もうとしている土地で自分が何をしたいかを見極めてください。そして、その地に根をはることになりますから、自分はもちろん、家族や地元の人たちが笑顔でいられるためにできることを考えて、実践していくようにすれば、きっとすぐに溶け込んでいけると思いますよ。」

自分がしたいことをすることと、家族や周りの方を幸せにすること。ともすれば、相反するかもしれない二つのことに目を向け、それが根っこの深いところで繋がっているということを、靖さんは教えてくれました。

木々や土、海と寄り添う

山、森、土、海。自然と呼ばれるこれらは昔から、人の営みに欠かせない存在でした。しかし、その存在感はビルのひしめく街で暮らすうちに薄まり、次第に忘れさられてきているのかもしれません。年末年始に盆休みといった長期休暇。街から離れた場所に住む親類の顔を見にいく際に、その存在を思い出す。自然と対峙する時間が、物理的にも心理的にも遠くなってしまったことに違和感を感じている方も多いのかもしれません。

そんななかで、自然と語り合い、生きていく糧を得る。人にとってずっと当たり前だったことを、地域で実践されている方々がいらっしゃいます。農業や漁業、林業など、第一次産業と言われる分野のお仕事は、言い換えると"自然と寄り添い、語り合う仕事"です。毎日が自然との対話ではじまり終わる仕事だと言えるかもしれません。

自然と対峙し語り合いながら生活していくことで、街で暮らしているときにふと感じていた「なぜ仕事をしなければならないのか?」「なんのために生きているのか?」という疑問に対し、シンプルな答えが自分のなかで出ました、という方もいらっしゃまいます。仕事を通して日々感じる自然。きっとそこで見える景色は、決して街にはない、言い表せないほどの美しさを秘めていることでしょう。

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