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移住者の声

何も持たずに来たが、なんとかなるし、なんとかする。現在は畳の魅力を発信中

今回紹介するのは、大学卒業後に宮津市に移住してきた甲斐歩野香さんです。
介護施設やキッチンカーのスタッフなどを経験して、現在は「畳屋辰蔵 杉本畳店」(宮津市)の広報として、畳の魅力を発信しています。宮津の住民の人柄に引かれて移住を決めたという甲斐さんに、Tangonianの長瀬啓二さん、クロスワークセンターMIYAZUで移住を含む関係人口創出事業に取り組む吉崎秋音さんが、移住のきっかけや現在の暮らしについて聞きました。
※2024年12月4日(水)わかもの放送局のインスタライブの対談内容をベースに、インタビューを追加したものです。


プロフィール

(左から)長瀬さん、甲斐さん、吉崎さん

甲斐 歩野香(かい ほのか)さん
京都市出身。大学時代に宮津市のゲストハウスを訪れたことをきっかけに、卒業後の2023年、同市へ移住。介護施設やキッチンカーのスタッフなどを経験し、現在は、同市の畳店「畳屋辰蔵 杉本畳店」で広報の仕事を担当している。

長瀬 啓二(ながせ けいじ)さん
一般社団法人Tangonian代表理事。京丹後市出身。
「暮らしと旅の交差点」をコンセプトに、海の京都エリアを中心にインバウンドツーリズムやローカルならではの出会いと体験、地域の智慧を学ぶプログラムの提供などコミュニティツーリズムに携わっている。

吉崎 秋音(よしざき あきね)さん
全国各地でまちづくり事業を展開する株式会社FoundingBaseの社員。宮津市のコワーキングスペース「クロスワークセンターMIYAZU」を拠点として、関係人口創出事業に取り組む。横浜市出身。


▶▶進路に悩んだ大学4年の夏、人に引かれて移住を検討

長瀬さん:吉崎さんは宮津市に移住してきて約2年半、甲斐さんは約1年半が経ちました。お2人が移住したきっかけは何だったんですか。

吉崎さん:私は仕事がきっかけです。大学卒業後は不動産会社で働いていましたが、地方で地域づくりに関わってみたいという思いがありました。そして全国各地でまちづくり事業をしている現在の会社に転職し、宮津で事業に取り組むことになりました。
それまで宮津に来たことがなく、天橋立があって、観光客が多いということぐらいしか知らなかったんですが、面白そうだなと思っていました。来てみると、自然が豊かですし、食べ物が本当においしい。魚もお米もおいしいし、生活がすごく豊かになったような気がします。面白い人たちも多く、楽しく移住生活が送れています。

甲斐さん:私は2023年、大学を卒業してすぐに移住してきました。大学では海外留学を考えていましたが、コロナ禍で行けませんでした。4年生の夏になり、友人たちは就職先が決まっていきましたが、私はやりたい仕事が分からず、一切就職活動をしていませんでした。
そんな中、「何か自分で始めてみたい」と、スーパーカブに瓶ラムネを積んで、地元の夏祭りで販売することに。そのお店のディスプレイを探していた時に、インスタグラムでレトロ雑貨を扱っている宮津市のゲストハウスを見つけて、遊びに行ったんです。そこのオーナーに瓶ラムネの販売のことを話したら、「めっちゃおもろいやん。自分のやりたいことやったらええやん」と言ってくれて。こういう人がいる宮津に身を置くのはいいなあと思いました。

長瀬さん:その方に背中を押されたんですね。

甲斐さん:そうですね。周りはみんな就職するし、親からの圧力もあるし、「どうしよう。でもわくわくせんなあ」と思った時に、京都市内にいた時とは違う言葉をかけられたので、「こんなところに住みたい」と思いました。

▶▶外にも持ち運べる、ポータブルな畳の魅力を発信

長瀬さん:お2人は普段はどのような仕事をしていますか。

吉崎さん:私はクロスワークセンターMIYAZUの運営をしています。施設に集まる方々を対象に交流会やセミナーを開催したり、移住を希望される方の相談に乗ったり、宮津のまちを案内したりしています。

長瀬さん:人と人、人と地域をつなぐハブのような仕事をしているんですね。

吉崎さん:こちらに来てから友人や知り合いの輪が広がりました。Facebookを始めたら、いつの間にか丹後の友人が増えていきました。

長瀬さん:人がつながりやすいという感じがしますね、丹後って。甲斐さんはこちらに来られて、どんな仕事をしていますか。

甲斐さん:高齢者向けのグループホームや、キッチンカーのスタッフを経て、現在は「畳屋辰蔵 杉本畳店」の広報の仕事をしています。新商品である半畳サイズなど3種類の大きさのポータブルな畳「地球を旅する畳、さすらい」を販売するために、ECサイトの構成を考えたり、PR動画を制作したりしています。
一般的に、畳というと部屋の中、足元に敷かれているというイメージですが、持ち運べる畳を作っています。見た目は普通の畳ですが、裏面は防水加工をした帆布を用いていますので、海辺や山の中に持ち込むなど、自由に使っていただけます。それで、どのような使い方ができるのかを探っているところです。

「畳屋辰蔵 杉本畳店」の広報として、サイトの構成やPR動画の撮影などに取り組んでいる

長瀬さん:甲斐さんは、なぜ杉本畳店の広報をすることになったんですか。

甲斐さん:私は小さな頃から写真を撮ったり、文章を書いたりすることが好きで、宮津に来てからも、SNSに宮津で撮影した写真や生活のことをアップしていました。それを、杉本畳店の杉本悠一代表が見てくださっていて。私はフリーランスでデザインなどの仕事もしていますが、2023年の秋ごろに「ECサイトを開設したいので力を貸してもらえないか」というお話をいただきました。そこでECサイトづくりに挑戦することにし、九州にいらっしゃる畳の原料であるイグサの生産者さんを取材したり、写真を撮影したりしました。
ECサイトは2023年12月に完成しましたが、そこからも杉本畳店との関係は続いていました。そして、広報にもより力を入れていきたいということで、2024年8月ごろから、本格的に広報に携わるようになりました。
「100点満点だとしたら200点。常に物事の本質を見極めようとしながら、創意工夫を重ねてくれています。」と「畳屋辰蔵 杉本畳店」4代目の杉本悠一代表。

長瀬さん:PR動画では、畑に持ち込んだポータブルな畳の上で、吉崎さんがコンテンポラリーダンスをしていますね。これも新しい畳の使い方ですね。

甲斐さん:そうですね。ヒアリングでも、「車中泊に使いたい」「海辺でギターを弾きたい」「山の上でおにぎりを食べたい」といった面白い意見が出ています。こうしたアイデアを、皆さんのもとで形にしていっていただきたいです。クッション性があり、一般的な畳と比べると少し足触りも柔らかいです。

長瀬さん:吉崎さんは、もともとコンテンポラリーダンスをしていたんですか。

吉崎さん:ダンスを長くしていました。甲斐さんに「畑で踊りたい」と話していたら、今回声をかけてもらい、楽しく踊らせていただきました。足から土のエネルギーを感じながら、空の下で踊るというのはすごく気持ち良かったです。山や森、海でも踊ってみたいですね。

▶▶「ここが人生最後の場所」とは思わなくていい

長瀬さん:宮津にはいろいろな方がいますが、「こんなことがしたい」と言ったら、「これできるよ」「一緒にやりたい」という出会いもありますか。

甲斐さん:まさにクロスワークセンターMIYAZUがそういう場所になっていますね。

吉崎さん:いろいろな人と出会って、地域の資源を使って新しいことをするというのはわくわくしますし、それがここの面白さ、良さだと感じています。やってみたいことを話すと、けっこう乗ってくれるのが宮津の人たちの良さですので、なんでも話してもらいたいです。

長瀬さん:お2人は丹後で暮らしてみて、考え方など変わったことはありますか。

吉崎さん:私は大学を出て、企業に勤めるという人生が普通だと思っていましたが、宮津に来てみたら、いろいろな暮らし方や働き方がありました。会社に勤めるだけではなく、自分で何かをしてみるという生き方もあったんです。もっと自由に考えていいんだと思いました。

甲斐さん:私は大学卒業後、そんなに貯金もなく、働く場所も決めずに勢いで来ました。住む場所が決まったのもぎりぎりです。宮津に来る直前は、母親から「ほんまに大丈夫か」と言われましたし、「やっぱり無理かも」と思った瞬間はありました。ですが、こちらに来てからもなんとか生きられているなと。温かい人たちもたくさんいるし、こんな私を面白がってくれる年上の方や、同世代の移住者の仲間もいますし。

長瀬さん:とても濃密な時間を過ごしているんですね。甲斐さんは今後、どのようなことをしてみたいですか。

甲斐さん:動画や写真を撮影していて演者との息がばっちり合った時や、その作品を、商品や人の魅力が最大限伝わるようなものに創り上げられた時がとてもうれしいので、自分の中のクリエイティブな部分を伸ばしていきたいという思いはありますね。杉本畳店やこれから出会う方々など、誰かの力になりながら生きていけたらなと思っています。

長瀬さん:最後に、お2人から宮津に移住やUターンを考えている方に向けて、メッセージをもらえますか。

吉崎さん:宮津はすごくいいところですが、人それぞれ、いろいろな感じ方があると思いますので、まずは来てみて気候や人、まちの雰囲気を感じてもらいたいです。地元の人と話す中で良い出会いがあるかもしれませんし、ちょっと自分とは違うなと思うかもしれません。そんな直感を大事にしてほしいです。何か不安に思うことがあれば、ぜひご相談ください。

甲斐さん:なんとかなるし、なんとかする、です。周りの方も温かくてなんとかしようとしてくれますし、もし合わなければ、無理だと思えばまたどこかに移住してもいいし、もともといた場所に帰ってもいい。あまり「ここが人生最後の場所だ」などと、重く考えなくてもいいと思います。何も持たずして来た私が、1年半生きられていますので大丈夫です。

長瀬さん:移住するということに、「覚悟を決めないと」や「絶対失敗してはいけない」、「トラブルになってはいけない」と思う方もいるかもしれませんが、もっと気楽に考えてもよいのではないかということですね。

甲斐さん:私はいまだにきちんとした肩書きがありませんが大丈夫です。何かを持ってないとだめだということはないので。

長瀬さん:ありがとうございました。


丹後への移住やUターンにご興味のある方で、もっと丹後のことを知りたい方はこちらまでご連絡ください。
・丹後暮らし探究舎(070-1399-5433)
・みやづ移住コンシェルジュ(050-5482-3345)
・伊根ぐらし相談 (0772-32-0502)
・よさの移住・定住サポート総合窓口(0772-43-9012)

このコラムに掲載の甲斐さんや杉本畳店の杉本さんと、現地にてお話をしたい場合、京都府丹後広域振興局地域づくり振興課企画活性化係(0772-62-4316、[email protected])までお問い合わせください。



(文責:京都府丹後広域振興局農林商工部地域づくり振興課)

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