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移住者の声

二地域居住+移住のふたりが、山の上の保育園に広げる集いのテーブル

「山のテーブル」對中 剛大さん・柳本 奈都子さん (南山城村)

今回お話を伺ったのは、京都府・南山城村の野殿童仙房(のどのどうせんぼう)保育園の跡地を活用して、「山のテーブル」をオープンされた 對中 剛大さんと 柳本 奈都子さんです。おふたりは、二地域居住と移住、それぞれの暮らし方をされています。そんなおふたりに、その暮らしぶりや、南山城村の様子、今後の夢についてもお話しいただきました。落ち着いた声で言葉を選びながら丁寧に話された剛大さんと、周囲の雰囲気が明るくなるような笑顔でたのしそうに話された奈都子さんへのインタビュー、ぜひ読んでみてください。

目次
■ プロフィールかつての保育園に、集いの場「山のテーブル」が誕生移住と二地域居住、それぞれの暮らし方この村に自分たちは何を返せるかまたいつか、この場所を保育園に

「山のテーブル」
旧 野殿童仙房保育園を活用し、「衣・食・住」に関連する地域に開かれた場所として、2017年の山の日(8月11日)にオープン。レストランやカフェの他、南山城村にゆかりのある製品や作品の販売、各種ワークショップなどが開催されている。

對中 剛大(たいなか まさひろ)さん
大阪と南山城村での二地域居住を実践中。大阪ではデザイン事務所を経営し、南山城村の「山のテーブル」では、得意の料理の腕を活かしてお食事メニューを担当。

柳本 奈都子(やなぎもと なつこ)さん
京田辺市にある実家から、南山城村へ移住。「山のテーブル」では、お菓子とドリンク、そして店内を彩る季節の花のしつらえを担当。


かつての保育園に、集いの場「山のテーブル」が誕生



―― なぜ、この場所に「山のテーブル」をオープンされたのですか?

剛大さん:きっかけは、2015年に童仙房に建つ旧小学校で開催された音楽イベントに遊びに行った時に、童仙房にあるギャラリー「ARABON」オーナーの清水 のばら さんに出会い、「かつて保育園だった場所を使ってみない?」とお話をいただいたことでした。

そして、役場のご協力もあり、2017年に「山のテーブル」をオープンしたのですが、それまでに1年半の時間をかけて準備をしました。いきなり形を決めてしまうと絶対に失敗すると思ったので、まずは地域に根差した活動にするためにも、この土地に通いながら、ちょっとずつちょっとずつ、村の人たちと関係性をつくることから始め、何をするかを考えていきました。そのうちに、ここを訪れた人たちが風土を味わったり、互いにひとつの席を共有することによって会話が生まれて、物事を共有できるような場所にしたいと考えるようになっていって。店名は、用途をレストランに限定せず、集いの場として連想できるように、「山の中にあるひとつのテーブル」で「山のテーブル」にしました。

奈都子さん:わたしもすごく気に入っている店名なんです。お店のオープンの日も、山の日にしました。食後の茶菓や喫茶のドリンクはわたしが担当していて、食事メニューは彼の担当。そんな役割分担で進めています。

剛大さん:全国の食材を使ってもっと凝ったものを作ることもできるかもしれませんが、それはしないというルールを自分の中で決めていて。南山城村や近郊の食材を使って、この地域の方にも、遠くから来られた方にもおいしく食べてもらえるような、そんなシンプルな料理がここには求められているのかなと思って作っています。


移住と二地域居住、それぞれの暮らし方



―― 奈都子さんは南山城村に移住され、剛大さんは二拠点で暮らされているのですね。

奈都子さん:最初は、京田辺にある実家から南山城村へ通っていたのですが、通っているうちにここに住みたいと思うようになって、わたしひとりで移住してきました。今となっては勇気のいることだったのかなとも思うのですが、当時は全く迷いがなかったですね。いい仲間もできましたし、移住してきてよかったと思います。なんと言っても、大家さんの愛子さんとの出会いが・・!

家を探し始めたとき、空き家はあってもなかなか貸してもらえなくて。ここの旧保育園の活用を勧めてくださった、のばらさんから愛子さんにお声がけいただいて、愛子さんのご自宅の離れに住まわせてもらえることになりました。愛子さんとは今でも同じ敷地内に住んでいて、1日に1回は顔を合わせられる距離で暮らしています。

わたしにとって愛子さんの存在はすごく大きくて、ほんとにかわいい、憧れのおばあちゃんです。村のいろんなことを教えてくださる師匠であり、お友達みたいな感じでもあり、本当のおばあちゃんみたいでもあり・・という感じですかね。忙しい時でもつい、ふたりで話が盛り上がってしまうこともしょっちゅうです。そんな風に暮らしているからか、彼は大阪にも生活拠点があるので週の半分は不在なのですが、あんまりさみしいとは感じないですね笑。

▲奈都子さんにとって、大家さんという関係だけにはとどまらず、とても大切な存在となっている愛子さん

剛大さん:今はコロナの影響でほぼ南山城村にいるんですけど、以前は火~木は大阪、金~月は南山城村での生活が基本でした。自分にとって、ふたつの拠点を行き来することが、気持ちをリセットできる良い機会になっていますね。場所も違えば生活環境も違うし、流れている時間の速さも違う。もちろんこっちに帰ってきてからも、料理の仕込みをしながら図面を描いたりと、せわしなくしているのですが。以前はもっと慌ただしい毎日だったので、今が自分にとってちょうどいい時間の流れ方なのかなと感じています。

大阪でのデザイン事務所の仕事と、南山城村での料理の仕事に、自分の中で特に境界は感じていないです。強いて言えば取り組む期間が違いますかね。建築は1~2年から、物件によっては10年と長い期間がかかりますが、料理であれば仕込みから3~4日くらいである程度答えが出ますし、おいしいという反応も早く返ってきます。そのあたりが、自分の中ではすごくいいバランスなのかなと思っています。

奈都子さん:お店と同様に、彼が家でも朝・昼・晩とごはんをつくってくれているんです。わたしは毎日おいしいものが食べたい人なので、おいしいごはんのある毎日ってうれしいですね。

それに、村の方はみなさん「なんで?」って思うくらいに良い方ばかりなんです。みなさんいい距離感を保ってくださって、干渉しすぎないけど、見守ってくれている感があって。それは他の移住者さんたちも同じように言われているんですけど、ほんとに絶妙な心地のいい距離感なんですよね。


この村に自分たちは何を返せるか



―― 南山城村においての活動で、フリーペーパーの制作や百貨店での催事にも取り組まれているのですね。

剛大さん:最初に廃園を使って何をしようかと考えた時に、まずはこの地域の方たちと少しでも関わりを作っていけたらと思い、南山城村の風土や人の魅力を伝えるフリーペーパー「やまびこ」の制作を始めました。取材を重ねていくうちに、だんだんと、村の人から「次はこの人を紹介してあげて」と声をかけてもらえるようになっていきました。

奈都子さん:村にはいろんなジャンルの作家さんもたくさんおられるのですが、それぞれの作品のクオリティーが本当に高いんです。この方たちのことを紹介したいっていうわたしたちの共通の思いから、百貨店のバイヤーさんにプレゼンをして、南山城村として、百貨店の催事に出展できることになりました。「南山城村にはこんなにすごい方がたくさんおられるんです、見てください!」っていう気持ちでやっていますね。

▲フリーペーパーとは思えない、読み応えのある記事や写真がふんだんに掲載されている「やまびこ」

剛大さん:村に何を返すかが僕らにとっては重要で、「やまびこ」を作って村の情報を届けるっていうことと、村外でイベントをしたときに村の人たちがよりよく見えるような環境をつくったり、百貨店とつなげたり、そういうことが僕たちなりのお返しになっていたらいいなと思います。

奈都子さん:そうやね、自分たちのことだけではなくて、村のためになることを大事にしています。今すぐのことだけではなくて、何年後かの村のためになったらいいなって思いながらやっています。

▲「山のテーブル」では、作家さんの作品やこだわりの調味料などが展示・販売されている


またいつか、この場所を保育園に



―― これから、この場所でおふたりがされたいことは?

奈都子さん:いま、「山のテーブル」のオープンから5年目に入ったのですが、ずっと、宿をやりたいなと思っているんです。わざわざ山の上まで来てくださった方と、わたしたちがいつも感じていることを分かち合いたいというか、ここで過ごしてゆっくり感じてもらえたらいいなと思っています。

剛大さん:この場所は、保育園の跡地であることを生かして、できるだけ当時の面影を残すように改装しています。改装時には地域の方たちにもDIYに関わっていただきました。将来的に、もし、この地域の人口が増えて、保育園として活用できるようになれば、保育園として返そうという考えです。

奈都子さん:わたしたちの目標です。いつかここを、保育園に戻す!

―― 最後に、これから移住や二地域居住をされたい方へ向けてのメッセージをお願いします。

奈都子さん:すぐに移住を決めるんじゃなくて、何回もいろんな季節に足を運んだり、いろんな人に会ったりしてから決めていくといいかなと思います。通ううちに、いいなと思ったら1回住んでみよう、という感じで。自分にそこでの暮らしが合ったらラッキーですし、違ったら別のところを探せばいいし。柔軟に考えるといいのかなと思いますね。

剛大さん:二地域居住のススメは、リスクがあまりないところかなと思います。いろんなスタイルがあると思うんですけど、都会の住みづらさを地方で解決したり、逆に地方の住みづらさを都会で解決するっていう、両方の面があるとよいのでは。自分にとって何がちょうどいいかを大事にして、二拠点目でどんなことをしたいかを明確にするといいと思います。

「山のテーブル」や、おふたりの活動をもっと知りたい方はこちらをご覧ください
▶︎「山のテーブル」HPと、FacebookInstagram
▶︎南山城村のおたより・季刊のフリーペーパー「やまびこ
▶︎村でつくられたお茶や、村の作家さんの作品を展示・販売する催事「山の出合い

南山城村への移住相談をされたい方は
▶︎「南山城村移住交流スペース やまんなか」へご連絡ください

その他、気になることや移住に関するお問い合わせは
▶︎京都移住コンシェルジュまでどうぞ


【インタビュー後記】

取材日が近づくにつれてどんどん緊張していきながら迎えた取材当日、「山のテーブル」に足を踏み入れた瞬間に、あちこちから伝わってくるセンスの良さに圧倒されて、好奇心を抑えられずに店内をキョロキョロと見回すことを止められませんでした。どんな人がこの場所をつくられたのか、どうやってその感性を磨かれてきたのか、そのヒントを知りたくて、夢中になっておふたりからお話を聴かせていただいたインタビューでした。

おふたりは、木次(きすき)乳業の創業者である佐藤忠吉さんの「地域を活性化させるのではなく、自給自足ができるような小さな共同体を目指す」という考えに共感され、その思想を南山城村での活動の軸にされているそうです。

良いと思うモノに対するおふたりの感性は似ているようで、買い物に行っても、「コレやな」「そうやね、コレやね」と、パッと意見が一致するそう。そんなおふたりのセンスがふんだんに発揮された空間で直接インタビューをさせていただけるという、とても貴重な体験になりました。HPやSNSももちろん素晴らしいですが、「山のテーブル」の席に実際に座って南山城村を体感してみることをぜひ、オススメします。

(文責:京都移住コンシェルジュ 山崎)

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