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イベントレポート

都会から地方へ。人が幸せになるためのしごとづくり

こんにちは、京都移住コンシェルジュの磯貝です。

本日は、2月13日(土)にオンラインで開催された「きょうと・くらし見本市 vol.1」のイベントレポートをご紹介します!≪セミナー概要はこちら

ゲストは、京丹後市に移住された原 康太朗さん。テーマは、「都会から地方へ。人が幸せになるためのしごとづくり~SDGs/サーキュラーエコノミー/女性活躍~」です。

◆ゲスト紹介:原 康太朗さん(神奈川県→京都府京丹後市)
福岡県出身。大学卒業後、NTTドコモに就職。妻の親族の病気・高齢化を契機に京丹後への移住の必要性に駆られる。4年以上の移住検討期間中、関係人口として地域との関係を深め、東京・京都・京丹後でイベント等を実施。しかしこれといったキャリアを描けないまま2019年に京丹後へ無職で移住。3児の父。現在は京丹後市地域雇用促進協議会に勤務し、SDGs、女性の活躍等の観点から、企業の魅力アップ、求職者のスキルアップ、雇用促進活動に取り組む。


今回のゲスト、原さんが移住されたのは、京都府北部、日本海に面した京丹後市。海水浴場が15カ所、温泉の泉源が40カ所もあり、海・山・里が近く、美味しい食材と観光資源が豊富な地域です。

配偶者が京丹後市出身で、親族の病気や高齢化をきっかけに京丹後市への移住を考えるようになったという原さん。「仕事は?暮らす家は?保育園や学校は?」分からないことや心配事だらけで、移住を考え始めてから4年以上も悩み続けたそうです。

まずは、そんな移住検討期間の4年間のお話をお伺いしていきましょう!

▲当日は、京丹後市移住支援センター「丹後暮らし探求舎」でスタンバイ。木材の倉庫をリノベーションした開放感のあるスペースです。


模索し続けた4年間。原さんが移住検討期間にしたこととは?



「なにか良い手がかりが得られるかもしれない!」と、まずは移住イベントに参加してみたという原さん。その中で、移住して京丹後市で活躍する、管理栄養士のスキルを活かして起業した関さんや、設計士のスキルを活かして空き家のリノベーション事業を始めた吉岡さんなどに出会います。

でも、そんな先輩移住者の成功ストーリーを聞く中で、「僕にはそんなスキルもないし、普通の会社員の僕には、移住は無理なのではないか..」と感じていたそうです。

「話を聞くだけではなく、実際に現地に行って自分の肌で感じてみよう!」と、今度は現地ツアーに参加してみることに。京丹後市は自然豊かで、お洒落なカフェがあることも、先輩移住者たちが温かく迎え入れてくれることも分かったものの、まだまだ「家族を連れて暮らす、仕事や家のイメージ」が掴めないままでいました。

そこで、以前の移住イベントをきっかけにFBでつながっていた”キラキラした先輩移住者(関さん)”に、何かできないか相談してみたところ、京丹後市外から人を呼ぶ観光農業イベントの企画や広報を一緒にすることに。

▲原さんが先輩移住者と一緒に企画した田植えや稲刈り体験などのイベントの様子


イベント自体は大成功でしたが、自分の移住にどうつなげられるのかが描けず、結局この時も移住に踏み切るには至りませんでした。

その後、「一過性のイベントではなく、仕組みを作れないか」と取り組んだのが、京丹後市の「地元企業」と東京にいる「京都との関わりを作りたい人」とをつなぐ仕組み『SketTokyo(スケットーキョー)』。手応えはありつつも、このときも移住に直接つながる実感がわかないままに終わってしまいました。

そうこうしているうちに、京丹後市での仕事や家のあてもないまま4年の月日が経ち、配偶者の親族のことも心配な上、3人のお子様も大きくなり、長女が小学生になる歳になってしまいました。「このままだと子供の転校も辛くなってしまう。このチャンスを逃したら元も子もない!これだけいろいろやっても確信できないなら、もう『えいや!』で行ってしまおう!現地に行けばきっと、無職でもなんとかなる!はず!」と、ついに多くの心配事が解決しないまま、移住を決断しました。


無職・家なしで移住を決断。移住して気付いた、仕事や家の探し方



なんとか京丹後市への移住を決断できた原さんですが、4年間悩んでも見つからなかった家と仕事には、どう出会ったのでしょう?

まず、家に関しては「地方の優良物件は、『知人からの紹介』が最短ルート」だと、身をもって実感したという原さん。

移住検討期間の4年間は、配偶者の実家のご家族には移住を考えていることを秘密にしていたそうですが、移住を決意し、実家のご家族にも相談してみることに。すると、お義父さんが知り合いの大工さんに聞いてくださり、物件の状態も家賃も大家さんもとてもいい物件が、いとも簡単に見つかったのだそう!

仕事に関しては、「まずは無職を楽しもう」と、学生時代の旧友を訪ねて、長女と一緒にカンボジアへ行ったり、京丹後市を満喫したりと、最初は”人生の夏休み”を楽しんでいたそうです。

▲丹後の広い空の下でのジョギングや大自然を感じる山登りで、豊かな自然を満喫したり
▲移住者の方が営んでいる、地元のオーガニック野菜を使ったお洒落なカフェ「キコリ谷テラス」へ遊びに行ったり


移住して2ヶ月くらい経った頃、ふとした「ご縁」で会議に呼ばれ行ってみると、「雇用促進プロジェクトやってみない?」といきなり誘われたそうです。最初は全く興味がなく、正直あまり乗り気ではなかったのだとか。でも、「ずっと無職のままでもな」という気持ちもあり、とりあえず挑戦してみることに。

そのとき紹介されたのが今、原さんがされている京丹後市地域雇用促進協議会での「雇用促進事業」です。「最初はつまんなそうだなと感じていたけれど、やってみたら面白かった!」と話す原さんの今のお仕事は、主に「企業の魅力アップに向けた取組」「求職者のスキルアップ」「企業と求職者のマッチングイベント」の3つです。その中からさまざまなプロジェクトが生まれています。


▲木工所 × 地域おこし協力隊 × お母さんのコラボチームによる「知育玩具の開発プロジェクト」。お互いの得意分野を活かし、環境にも子どもにも優しい商品を開発し、全国展開しています。

▲京丹後市の地元企業とカンボジアをつないだ「子どもの未来を紡ぐ糸」。無職のときに会いに行った旧友とのつながりと、京丹後市の企業との出会いから生まれたプロジェクト。

▲丹後の豊富な食材を活かした「食育体験ツアー × 加工品開発」。移住イベントで出会った”キラキラした先輩移住者たち”と今、一緒に仕事をしています。


原さんは、こうしたプロジェクトをする中で、「地方には隠れた資源がたくさんある」ことに気づいたといいます。知らなかっただけで、実はモノも人材資源も豊富で、まさに今トレンドの「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」を実践できる・挑戦できる土俵が、地方にはあると実感しているそうです。

移住する前は、「地方には全然仕事がない」と思っていたけど、実際には「地方にも面白い仕事もあるし、自分でつくることができる。しごとは『会社』ではなく、そこにいる『人』の魅力なんだな」と今は感じていると話してくださいました。

また、京丹後市の企業・就職サポートサイト「京丹後のジョブなび」には、移住前は気づかなかっただけで、求人を出している企業が実際にはたくさんあるのだそう。原さん自身がそれで悩んだ分、「京丹後市の仕事を知ってもらえるように発信することが、今の私の仕事です」とおっしゃっていました。

▲女性を対象にした「時間と場所に縛られない働き方を目指す」スキルアップセミナーも開催。一緒にセミナーを行っている講師は、移住検討期間中に現地訪問イベントで出会った方なのだそう。


たくさん悩んだからこそ伝えたい、移住希望者へのメッセージ



原さんが移住検討期間中に感じていた「地方移住の3つの悩み」に、原さん自身が答えてくださいました。移住した今だからこそ感じることが、たくさんあるそうです。

悩み①「移住イベントで聞く成功ストーリーは、自分には真似できないから意味がない」

移住後の今は、「移住イベントや現地で知り合った人と関係を築いておくことが、とにかく大事!」と、身にしみて感じているといいます。

京丹後に移住した今、自分には手の届かないと思っていた”キラキラした先輩移住者や地域の人”と一緒に仕事をしたり、新しいプロジェクトを生み出している原さん。地方は「人間関係や友人、人生の新ステージへすすむ意志・能力」など、”無形資産”で動くものが多いからこそ、人とのつながりがすごく大切になってきます。

原さん自身、移住してから「運 × 縁」でここまでやってこれたと感じているそうですが、それを引き寄せることができたのは、「好奇心」と「多動力」があったからこそ。面白いものがあったらとりあえず首を突っ込む。興味のあるイベントがあったらとりあえず参加する。そこで出会った人と何か一緒にやってみる。たくさん興味を持って動いていたからこそ、移住検討期間は全然意味がないと思っていたことが、今、実を結んで意味を持つようになってきたとお話してくださいました。

悩み②「とにかく情報が少ない。仕事・家の情報が見つからない!」

これに関しては、「積極的に関係者を頼ることが重要」だと実感しているそうです。「頼る力」も大切なのだと。

ネットでのwebサーチも、それはそれで大事だけど、知り合いの知り合いを頼ったり、関係者に話を聞いてみたりする方が、もっと有益な情報を得ることができる。地方は人の力・ネットワークが強いからこそ、ネットでは探せない情報が、人を頼るとたくさん出てくるそうです。

ただ、原さん自身すごく苦労した経験があるので、「現地の情報が少ない」という問題を解決するため、現在「Local Mediaづくり」を進行中なのだそう。こちらも、原さんが移住検討期間中のイベントなどで出会った方々と進めているプロジェクトです。

悩み③「関東から移住しようとすると、中間地点がなく、仕事も家も学校も、全てを一変させることになり、ハードルが高い」

でも、「中間地点は事後的に発生する」と今は感じているといいます。

①の話にも通ずる部分ですが、移住前、関係人口として関わってきた幅と深さが 「後から」意味を持つようになるそうです。「その時に出会った関係があるからこそ、今仕事ができている。移住前には気づかないことも多いけど、ご縁は後からついてくるもの。今はとにかく興味を持って動いてみてください」とおっしゃっていました。

さらに、「実はお金も大切!地方に行ってもお金はかかります。生活コストが安いイメージがありますが、車やガソリン代、光熱費は都会よりかかる場合も多いので、貯蓄を計画的に進めていくことも、移住への大事な一歩です。」ともおっしゃっていました。

その後は、参加者からの質疑応答など、たくさんの話で盛り上がりながら、生中継と動画で、丹後のまちの様子をお届けしました。

▲「丹後暮らし探求舎」の京丹後市移住相談員の小林さんを生中継。ここで京丹後市への移住相談ができます。

▲京丹後市峰山町の中心地の様子。メインストリートに行けば商業施設もあり、ネットショップも使えるので、買い物に困ることはないそう。まちの1割は便利なところ、9割は自然豊かなエリアなのだとか。


原さん自身が、移住検討者として、たくさんたくさん悩んだからこそ、その時に感じたこと、そして移住後の今感じることが、とても心に響いてきました。

「移住に再現性はない」と原さんもおっしゃっていましたが、移住のカタチは本当に人それぞれで、一人ひとり違うストーリーがあります。自分には真似できない”キラキラ成功ストーリー”だと思っていた移住後の暮らしを、今は原さん自身が叶え、手の届かないと思っていた人たちと、一緒に仕事をしています。小さなご縁を紡ぐことで、その先には今まで見えなかった景色が待っているかもしれません。

▶︎「きょうと・くらし見本市」の第2弾は3月7日(日)に開催されます!次回のゲストは南丹市に移住された東裏さんご夫妻。テーマは「複業でくらす~webデザイン+ゲストハウス+サイクリングツアー~」。移住と同時に「GOMA」を起業し、3つの事業をナリワイに、息子さんと3人で、仕事もプライベートも楽しみながら暮らしているご夫婦です。ぜひ東裏さんご夫妻とも、新しいつながり作りに来てください!※参加申し込みはこちらから。

▶︎原さんが取り組まれている新しいプロジェクトの1つが「ローカルでのくらしごと」。1月に開催された「Online Farm Tour」はこちらのyoutubeでご覧いただけます。3月下旬には、京丹後市の2つの農園(「梅本農場」と「日下部農園」)を訪問し、農場でのお仕事体験やまちを散策するツアーも開催予定です!※詳細は決まり次第、イベントページでご紹介予定。

(文責:京都移住コンシェルジュ 磯貝)

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