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移住者の声

田舎ほど起業に向いている?!「地方×起業×複業」の可能性

「GOMA」 東裏篤史さん・晶子さん(南丹市胡麻)


今回は京都府の中央に位置する、南丹市日吉町の胡麻地区に移住された東裏篤史(ひがしうらあつし)さん・晶子(あきこ)さんからお話を伺いました。
移住と同時に起業し、ゲストハウスの他、デザイン事務所やローカルマガジンの作成、サイクリングツアーなど、いろいろな人とつながって、どんどん新しいことを始めているお二人。生活と仕事が混ざり合い、今の暮らしをとても楽しんでいるのが伝わってきました。そのような働き方・暮らし方を実現するまでに、どのような経緯があったのでしょうか。

目次
■ プロフィール「起業したい!」からはじまった、東裏さんの移住計画人と人とのつながりから生まれる、地方での複業の可能性とは?生活と仕事が混ざり合い、楽しみながら暮らす

東裏 篤史さん(写真左)
京都府亀岡市出身。大阪の専門学校に進学し、プログラミングを学ぶ。卒業後、大阪のデザイン会社に勤務し、印刷物を担当しながらWEBデザインも独学で習得。その後、京都市内のデザイン会社に転職し、企画から納品まで一貫して行う。独立し、WEBデザインの会社を立ち上げたが、一度は断念。京都市内にある日本初のサイクリングツアー会社の運営に携わる。
2017年、南丹市胡麻への移住と同時に、晶子さんと一緒に、デザイン、ゲストハウス、サイクリングツアーを行う「GOMA」を起業し、デザイン制作やツアーガイドを担う。趣味はサイクリング。

東裏 晶子さん(写真右)
岡山県出身。大阪の大学を卒業後、公務員としてまちづくり、建築関連業務に携わる。在職中に一級建築士合格、環境省に出向した経験もある。退職後、イギリスへ留学し、1年間世界を旅する。帰国後、語学学校に経営メンバーとして参加。
2017年南丹市胡麻への移住と同時に、篤史さんと一緒に「GOMA」を起業し、マーケティング、ディレクション、ライティングなどを行う。南丹市に移住した女性3人による民間プロジェクト「つむぎ」のメンバーでもあり、移住者による移住ガイドブック「楽しい移住」を作成。


「起業したい!」からはじまった、東裏さんの移住計画


ーー移住しようと思うようになったきっかけは?

篤史さん:京都市内のサイクリングツアー会社に勤めていたときに、妻と出会ったのですが、当時は妻は大阪市内で働いていて、遅いときは夜11時頃までお互いに仕事をし、休みも平日と土日で合わず、しんどくなってきていました。

もともと僕は、もう1回起業したいという思いがあったのですが、妻も以前から起業を考えていたので、同じビジョンを描いていた2人で「起業しよっか」って。

その時は京都市中心部のマンションに一緒に住んでいたんですけど、起業するなら家賃も高い京都市内に住む必要はなかったんです。
「起業はしたい。けど京都市内だと固定費もかかるし、住んでいる必要もない。だったら田舎に行こう!」という話になって。

2017年4月に移住と同時に、開業届けも出して「GOMA」を起業しました。

ーー起業がきっかけで、移住を決められたんですね!京都府内も広いですが、エリアはどうやって決められたんですか?

篤史さん:もともとサイクリングが趣味で、実家のある亀岡市からこの辺(南丹市の胡麻あたり)には、毎週のように自転車で走りに来ていたんです。特に、ゾンネ・ウント・グリュック作野商店というパン屋さんが大好きで、よく通っていました。

移住を考え始めたとき、空き家バンクという制度があることを知り、南丹市定住促進サポートセンターからご紹介いただき空き家探しをしていたら、大好きなパン屋さんの近くによい古民家を見つけて、「ここだ!」と。

▲自然に囲まれた場所にある築70年の古民家をリノベーションして、自宅兼、事務所兼、ゲストハウスに。

ーー移住してみて、胡麻という地域はどうですか?

篤史さん:この地域は、僕らみたいな移住してくる人に対してすごく寛容なんですよ。
このあたりの集落には移住者も多くて。海外の方も、僕らが移住してくる前からこの地域に移住してきていて、胡麻で僕が知っているだけでも外国人の方が数人います。移住者に対して、とてもウェルカムな地域だと、住んでみて思います。

▲息子さんの決めポーズ「1」をみんなで一緒に!地域の方からも可愛がってもらい、子育てもしやすい環境なのだそう。

篤史さん:初めて地域の集会に出たときも、すごく歓迎してくれて、子どもが生まれたときには、集会所の黒板に「東裏さん第一子誕生!」と書いて、盛大にお祝いしてくれました。

僕がウェブデザインやサイクリングツアーの仕事をしているのを知って、「文化振興会で、地元のおじいちゃんおばあちゃん向けにスマホ教室をやってほしい」と言ってもらったり。サイクリングツアーを地域の方向けにやる予定もあるんですよ!


人と人とのつながりから生まれる、地方での
複業の可能性とは?


ーーデザイン、ゲストハウス、サイクリングツアーと3つの事業を行う「GOMA」。いろいろなことされていますよね!

篤史さん:移住前に妻と一緒に事業計画を立てていたんですけど、当時起業するまでは、移住して田舎に来たら、どうしてもデザインや広報の仕事は減ると思っていたんですね。
なので、デザインとゲストハウスとサイクリングツアーで、収益1:1:1くらいで事業計画を書いていたんです。でも実際には、意外とデザインや広報を求めてくれる人が多くて、デザインの仕事が9、ゲストハウス0.8、サイクリングツアー0.2くらいです。

▲ツアー会社経験もあり、サイクリストでもある篤史さん。サイクリングツアーでは、地域に住んでいるからこそ知っているおすすめスポットや美味しいグルメを満喫できます!
▲晶子さんのアイディアで、家の離れを一棟貸しのゲストハウスに。里山の景色に癒され、ゆっくり流れる時間を堪能できる宿。長期滞在やワーケーション、移住体験もできます!

篤史さん:僕はデザイン、妻はディレクションやマーケティング、ちょうど2人の得意分野が全く違うので、力を合わせたら、広告代理が全部できるんです。

商工会にも入らせてもらっていて、商工会で仕事を紹介してもらったり、いろいろな人とのつながりから、ありがたいことに仕事は途切れずにいただいています。田舎の会社でも、世代が変わって若い人が中心になってくると、ウェブや広報、デザインの需要も出てくるんですよね。

ーーデザインの仕事を田舎でするときに困ることはないですか?

篤史さん:自分にも得意分野と不得意分野があって。例えば写真は撮れないし、物書きではない。でも、知り合いやたくさんのつながりから、プロカメラマンやライターさんなどと一緒にチームを作ることで、個人ではできない規模のプロジェクトにも対応できています。
田舎でも、そうやってプロ同士が並列でチームを作って一緒に仕事をすることで、面白いものが生まれていくんです。

ーーローカルマガジン gomanote(ごまのおと)もそうやって生まれたんでしょうか?

篤史さん:はい。関わってくれているプロカメラマン和田さんは、元々関東や関西の都市圏を拠点にされていましたが、今は亀岡市でご両親の農業を手伝いながら、日本全国で活躍されています。あと、胡麻が好きで通ってくれているうちに仲良くなったライターさんたちと一緒にチームを組んで制作にあたりました。

▲胡麻周辺で楽しめるグルメスポットや人を紹介したgomanote。府外からもこれを手に取って遊びに来てくれたり、NHKもこれを見て取材に来てくれたりと、新しいつながりも生まれているのだそう。

晶子さん:デザインをやる人が地域に入ったら、どういうことができるとか、どういうつながりができるとか、ブランディングできたらこんないいことある、みたいなことが言えたらいいのかなと思っています。地域に住んでいるからこそ、伝えられる魅力やできることってあると思うんです。

ーー晶子さんは南丹市に移住した女性3人による民間プロジェクト「つむぎ」もされていますが、こちらはどのようなきっかけで結成されたんですか?

晶子さん:「移住希望者向けのガイド本が作りたい!」とつむぎができました。

私とはづきさん(ドワイヤーはづきさん)は同じ集落に住んでいて、私がここに住むのを決めた頃に、「移住した人がいるから会ってみたら」と紹介してもらい知り合いました。もともと本の着想は、はづきさんが持っていて、誘ってもらったんです。英訳はその中でも念願でした。
本を作るために内容に厚みを出すため、あっちゃん(前田敦子さん)に声をかけました。あっちゃんは、元地域おこし協力隊のつながりから知り合いも多く、フットワークも軽やか、まさにぴったりでした!

▲左から、ドワイヤーはづきさん、東裏晶子さんと息子さん、前田敦子さん

ーー1人じゃなくて、3人集まったからこそできることって、たくさんありますよね。3人集まると、また発信力も違ってくるんじゃないでしょうか。

晶子さん:女性3人っていうのも大きかったのかも。口コミや、情報を得ようとする力も大きいですし。女性だと、地域のコミュニティや友達をうまく作りたい人が多いんじゃないかな。

はづきさんの熱量と作業量は尊敬していますし、あっちゃんのネットワークは誰も真似できないです。みんなが編集長みたいな感じでした。

はづきさんが移住して6年、あっちゃんが3年、私が1年くらいのときに作った本なのですが、同じ移住1年生とかじゃなくて、それぞれ違って、違う視点があって。みんなそれぞれ、通訳だったり、ネイチャーガイドだったり、さまざまな分野のプロフェッショナルで。そんな3人だったからこそ作れた本だと思います。
私自身、産後間も無くから関わることができて、移住すると「友達がいない」ことが大きな悩みだったりするんです。こうやって、声をかけてもらえて、本当にラッキーだなと感謝しています。

外国人の方の移住相談や地域活動がしたい方ははづきさん、ネイチャー分野はあっちゃん、なにか事業をやりたい方は私たちに、ご相談いただければと。

▲100ページ超の超大作!移住者が作ったからこそ語られるリアルな情報が盛り沢山!「移住して、達成することは自分たちの暮らしを楽しむこと」そんな雰囲気が感じられる楽しい本です。


生活と仕事が混ざり合い、楽しみながら暮らす


ーーお話を伺ったり、SNSを拝見していると、ものすごく今の暮らしを楽しんでいるのが伝わってきます!

晶子さん:さっきも友人に、仕事してなさそうって、言われてたもんね(笑)。「東裏さん、自転車乗ってるか息子と遊んでるか以外、知らないです」って。

篤史さん:一応してるんですよ(笑)!もともと仕事も好きで、趣味みたいなものなので。胡麻に住み始めてから、生活と仕事がどんどん混ざり合ってきてますね。

晶子さん:まずは自分たちが楽しんで面白がって暮らしていく中で、自然とたどり着いたところで、結果的に地域にも貢献できていたらいいな、と思っています。
胡麻という田舎で面白いことをどんどんやって、面白そうだなって訪ねてくる人が増えて、胡麻がどんどん楽しい田舎になって、「私も胡麻で何かやりたいな」という人が増えてくれたら、すごく嬉しいです。

篤史さん:僕らがここでちゃんと生活して、お金稼いで、楽しく暮らしていることが、いいロールモデルになって、そういう人が増えてくれるんじゃないかと思っています。そのための情報発信は、ずっとしていきます。

ーー移住するときに「仕事」がネックになる方も多いと思うのですが、仕事の面で何かアドバイスはありますか?

篤史さん:田舎に来るなら、一度プロとして本気で働いて、様々な経験を積んでからの方がいいんじゃないかなと思っています。自分のポテンシャルがどれくらいあるのか、1回試してみた方がいいのではないかと。

僕も妻も、今までのキャリアやスキルが全部、今、活きています。
僕らの移住者の知り合いでも、自分たちで仕事を持っている人が多いです。

ハローワークで仕事を見ると、仕事の絶対数も少ないし、お給料も減ってしまうので、移住を躊躇してしまう方も多いのではないかと思います。なので、収入を得る手段として、どこかに勤めて収入を得続けようと考えるよりは、僕らみたいにフリーランスや自営業で、自分でお金をつくることを考えてみた方が、移住を考えやすいと思います。あと、僕らもそうですし、移住者の知り合いでも、いろいろな収入手段を組み合わせている方が多いですね。

晶子さん:でも、今いただいているお仕事って、基本的にはこっちに来てからできたお客さんばかりなので。スキルだけではなく、やはり人や人付き合いが好きなことも、すごく大切だと思います。

ーー移住を考えている方にメッセージがあれば、お願いします!

晶子さん:地域の人と知り合えるのが楽しみな人、人が好きな方に来てほしいかな。あと、自分の家の中のことだけじゃなくて、家の周りや地域にも興味がある人がいいなと思います。私もよく、人に会いにウロウロしに行きます。地域と交流したいっていう気持ちのある人なら、複数の拠点を持ちながら移住を考えている方も歓迎ですよ!

篤史さん:ゲストハウスや飲食業をやりたい人が胡麻に増えたらいいなっていうのは、前からずっと言い続けているので、もしかしたらそろそろ来てくれるんじゃないかな、という期待も。

晶子さん:夜食べられるところと、コーヒーショップが出来たらもうベスト!

篤史さん:あとブルワリーがあったら嬉しいね。だから、そういう人ぜひ来てください(笑)。

晶子さん:昨日参加したビジネスセミナーで講師の方が言っていたのですが、「ビジネスを始めたいなら、とにかくやってみてください。用意周到にすればするほど成功するわけではないので、とにかくまずはやっちゃってください」と。
移住も同じだと思います。とにかくやっちゃってください!

篤史さん:そう!まずはやっちゃってください!来てみたらどうにかなります!
胡麻や地域で何かやりたい方がいたら、アイディアだったらいくらでも出しますよ。ぜひ一緒に、なにかやりましょう!

そう言って、ぽんぽんっと胡麻で始まったら楽しそうなアイディアを出してくださった東裏さんご夫妻。移住して、まだ3年半ですが、今まで培ってきたキャリアやスキルと、新しく築いた人とのつながりの中で、どんどん新しいことを生み出していくお二人。「今が一番幸せです」そう笑顔でおっしゃっていました。

地方だからこそできる仕事や、つながりがあります。移住のカタチは十人十色。移住先の地域もその特色はさまざまで、お仕事も起業やフリーランスだけでなく、人それぞれにぴったりのカタチが見つかるはずです。東裏さんご夫妻のように仕事と遊び、どちらも楽しむ暮らし、してみませんか?

▶︎GOMA
東裏ご夫妻に会いに行きたい方は:ゲストハウスGOMA
胡麻の風や美味しいグルメを満喫したい方は:GOMAサイクリングツアー
ローカルビジネスや胡麻で起業したい方は:GOMAデザイン

▶︎つむぎ
「楽しい移住」の本が読める場所や入手方法を知りたい方はこちら
南丹市への移住を考えている方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です!

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(文責:京都移住コンシェルジュ 磯貝)

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