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まちを楽しみもっと面白く!デザインの力で伝える地元の魅力

「KOKIN」坂本真由美さん(舞鶴市)


今回は、京都府北部、”海の京都”にある舞鶴市にUターンした坂本真由美さんからお話を伺いました。地域に密着したデザイナーとして活躍しながら、まちづくりチーム「一般社団法人KOKIN」での活動や、ふるさと納税事業にも取り組む坂本さん。地元舞鶴に戻り、まちを楽しみながら自分の「好きなこと」を仕事にしていった経緯や、地方でデザイナーやクリエイターが求められている理由など、「地方で何かチャレンジしてみたい」方に向けたメッセージがたくさん詰まっています!

目次
■ プロフィール
□ Uターンして地元舞鶴へ。一度出たことで見えた景色
■ 「まちを楽しむ!」舞鶴で出会ったまちづくりチーム
□ いま地域でデザイナーが求められる理由とは?
■ 自分の「好きなこと」や「気持ち」に素直に“動く”

坂本真由美さん
舞鶴市の西舞鶴で生まれ育ち、大学進学で大阪へ。学芸員コースにて美術史・評論などを学ぶ。卒業後、国立民族学博物館に勤務。博物館の動画・カタログ制作をする中で「つくる楽しさ」を感じ、クリエイターの道へ。デザインの専門学校を卒業し、多種多様な業種でデザイナーとしての修行を積む。その後、大阪の老舗メーカーのデザイナーとして、自社商品の商品企画、プロダクトデザイン、パッケージ、カタログデザイン、雑誌・新聞広告などを担う。
2016年舞鶴へUターン。現在は、舞鶴に自身のアトリエ「アストルフォン」を構え、地域に密着したデザイナーとして活躍する他、”まちを楽しむ”まちづくりチーム「一般社団法人KOKIN」、ふるさと納税事業に取り組む「合同会社HOUKO」のメンバーとしても活動中。


Uターンして地元舞鶴へ。一度出たことで見えた景色



――西舞鶴で生まれ育ち、大学進学を機に大阪に行かれたんですね。

坂本さん:当時は、舞鶴を出たくて出たくて仕方がなかったんです。コンビニもないくらい何もなかったので、都会に憧れていて。今思えば、いくらでも舞鶴でも楽しめたんですけど。「大学は外に出て通うもの」という意識が小さい頃からあったので、そのチャンスをひたすら待ってました(笑)

大阪には、学生時代も合わせるとトータルで15年くらいいたのですが、大阪で出会った人、経験した仕事、培ったスキルは、今でもすごく私の財産になっています。


――舞鶴へのUターンのきっかけは?

坂本さん:「正社員のデザイナーになって、自社商品を1から作りたい」という夢が、大阪の老舗メーカーのデザイナーとして働かせてもらえることになったときに、1つ叶ったんです。

日本国内に自社工場があるメーカーで、商品企画のリサーチから、プロダクトデザイン、パッケージ、お店に置かせてもらうまで、1からトータルで考えさせてもらうことができて。「自分も納得できて、会社にも貢献できるようなヒット商品を作ることができたら」と新たな夢を持って、仕事が面白くて楽しくて夢中で働いていました。

でも、ちょうどそう思える商品ができたかなと思ったときに、体調を崩してしまって。若いし大丈夫と思って仕事ばかりしていたのですが、知らず知らずのうちに体に無理をさせていたみたいで。それで舞鶴にUターンすることに。

ですので、ポジティブに「地元舞鶴に帰りたい!」と思ったというよりは、体調を崩し舞鶴に戻らざるを得なくなってしまったというか。最初は舞鶴に戻るのが嫌で嫌で(笑)。でも、そういう運命だったのかなと、今は帰ってきてよかったなと心から思っています。

▲西舞鶴は、歴史のある城下町。子どもの頃は出たくてしょうがなかったけど、Uターンした今、自分の生まれ育ったまちの歴史や魅力を再発見しているのだとか。

「まちを楽しむ!」舞鶴で出会ったまちづくりチーム



――そうだったんですね。「舞鶴に帰ってきてよかったな」と思うのは、どうしてですか?

坂本さん:今、すごく楽しいので!そのきっかけになった「一般社団法人KOKIN」との出会いは大きいです。

KOKINは、「自分たちの手で、舞鶴のまちをどんどん面白くしていこう!」という想いのもと始まった、「まちを楽しむ」をテーマに活動しているチームです。西舞鶴を拠点に、古民家の宿「宰嘉庵(さいかあん)」や、シェアスペース「cafe&bar FLAT+」などを運営していたり、昨年からはふるさと納税事業にも取り組んでいます。

今はメンバーが約10人。みんなそれぞれ本業を持ちながら、KOKINとしての活動も行っています。

▲昨年夏にOPENした「宰嘉庵」の2号店『かなで』。1号店とはまた違った雰囲気で、「交流」をテーマにしたゲストハウス


――KOKINとは、どのように出会ったんでしょうか?

坂本さん:私の家がKOKINが運営するシェアスペース「cafe&bar FLAT+」に近いということもあって、Uターンして体調が回復し始めた頃に、リハビリがてらこの辺りをぶらぶら散歩していたら、「面白いお店があるな」と発見して。私が舞鶴にUターンしてきたのが、ちょうどFLAT+が出来てすぐくらいだったんです。

当時は曜日ごとに店長が変わるチャレンジショップをしていて、最初はお客さんとしてよく遊びに来ていました。通っているうちに、KOKINメンバーと仲良くなっていって、「メンバーになりませんか?」と誘ってもらって。私も興味があったので、「ぜひ!」と。


――KOKINでは、昨年からふるさと納税事業も始められたんですね。

坂本さん:KOKINが運営する「宰嘉庵」をゲストハウスにした頃に、「チームとして、自分たちで稼いで、自分たちの資金で継続的に回していけるようになりたいね」という話をしていたんです。

そうしたら、東京のNPO法人の方がFLAT+に来られる機会があり、KOKIN代表の大滝さんと3人で打ち合わせをさせていただく中で「ふるさと納税を受託して、民間運営でまちづくりチームを回しているいい事例が、全国にいっぱいあるよ」とアドバイスを頂いたんです。「地元に還元できていい仕組みだ!」と、すぐに準備をはじめました。その方に宮崎県にある「こゆ財団」さんを紹介いただいて、大滝さんと副代表のまいちゃん、私の3人で研修に行きました。

研修で学んだ内容を参考に、運営体制を準備していきました。市役所の公募により、地域情報サイト「まいぷれ」も運営する地域商社「株式会社ホリグチ」さんが手を挙げ、「だったら一緒にやりましょう!」と「合同会社HOUKO」が誕生しました。

KOKINだけだとこんなにも出来ていなかったと思うので、ホリグチさんとの出会いはとても奇跡的でした。社長の堀口さんも、営業の児島さんもすごく熱い想いと情熱を持っていらっしゃって、とてもいい形で一緒にさせてもらってます。

▲KOKINでもHOUKOでも、主にデザインを担当している坂本さん。写真は、坂本さんがデザインしたふるさと納税事業「HOUKO」のチラシ


――どんどん面白い活動をされているんですね。

坂本さん:KOKINがいろいろ活動するようになったからなのか、最近は大学生もFLAT+に集まってくれるようになってきて。昔は20代前半の子に舞鶴ではなかなか出会えなかったんですけど、最近は少しずつ増えてきました。

今KOKINでもインターンの大学生を1人受け入れているんです。その子に「学生向けのインターンシッププラン」を練ってもらっていて。しっかりメニュー化して発信していくことで、若い方も来やすくなるのかなと。

他にもゲストハウスの体験オプションをもっと増やしたり、「こゆ財団」さんのように、ふるさと納税の研修を始めてみたいなと思っていたり、まだまだやりたいことはたくさんあります!

▲KOKINにインターンに来ていた大学生の網干さん(写真中央)。地元の先輩(写真左)と一緒に、舞鶴の事業者の方にインタビューしながら舞鶴を発信する「町おこし学生団体 my link」を立ち上げ、活動中。

いま地域でデザイナーが求められる理由とは?



――本業は、デザイナーとして活動されているんですよね。

坂本さん:はい。個人事業主として「アストルフォン」というデザインのアトリエを開いているんですが、KOKINのメンバーに加えてもらっているということもあって、本業のデザイナー業でも、ありがたいことに多くの依頼を頂いています。

デザイナーとしての営業は全然していないんですけど、FLAT+にいることで、いろんな人が集まってきます。数珠つなぎで「あそこで作ってくれるらしいよ」「じゃあ私もお願いしよっかな」と、どんどん自然とつながって、20〜30件は常に案件を抱えているような感じです。

地域に根ざして活動していることで、関係性が築けていたり、地元のことをよく分かっているというのも、相談しやすい関係につながっているのかなと思います。

▲FLAT+での取材中にも、フラッと立ち寄った地元の方から相談を受ける坂本さん


――今はどんなことに取り組まれているんですか?

坂本さん:ご依頼いただく仕事だけじゃなく、自分の興味があることにも、少しずつ挑戦しています。

大阪時代は、プラスチック製品を扱うことが多かったのですが、間伐材や害獣駆除した鹿皮、流木など、人や環境に優しい素材にもともと興味があって。せっかく舞鶴という田舎に戻ってきので、そういう”いい素材”で何かできないかと探していたんです。

最初は、間伐材についてお話を伺おうと、舞鶴にある木のおもちゃのお店に伺いました。すると、そのお店の方が、舞鶴市の海沿いにある神崎という地域で、夏みかんの栽培を盛り上げようと活動している「舞鶴夏みかんの会」の代表もされていて。そこから話が広がって「神崎面白いから1回来る?」と誘ってもらい、とんとん拍子で話が進んで、私も夏みかんの会のメンバーに。

神崎に面白い作物があることを教えてもらって、今は「神崎の素材で何か作りたいな」と動いています。夏みかんは、無農薬で冬場でも元気にいっぱい実っていて、日本固有の果物で京都産。面白いポイントがたくさんあって、もっともっと活かせるんじゃないかなと。その付加価値をアピールして、都市圏の方にも食べていただけるような商品を作りたいなと思っています。

▲神崎の夏みかんと試作中の夏みかんジャム。夏みかんの酸っぱさを活かしたドレッシングや、香りを活かしたブレンドティーも構想中。今度紅茶を学びに長野に研修にいくのだそう。


夏みかんだけじゃなく、神崎の落花生にもすごく興味があって。落花生を生産されている方々が80代〜90代で、結構大変な作業をしているんです。落花生にちゃんと値段がついて売り先もあって、ビジネスとして成り立つのであれば、生産者として舞鶴や神崎に新しく来ていただける方も増えてくれるのかなと。落花生の栽培の仕方や塩煎りの仕方も、教えてもらうんだったら、名人のおばあちゃんが元気な今なのかなと思っていて。

私も、面白いから商品化したいなと動いているんですが、初めてのことも多く、楽しみながらいろいろ手探りでやっている感じです。


――大阪で仕事していた頃と、舞鶴で今している仕事の違いは?

坂本さん:生産者さんとダイレクトにやりとりできたり、扱う商品や素材も違ってきています。

舞鶴には、本当に手間暇かけて作られた素晴らしい作物や商品がたくさんあるんです。でも、どんなに素晴らしいものを作っておられても、商品になったときに、その良さが伝わらなかったり、パッとしなかったら、地元で安く売られるだけになってしまう。それが、もう少しパッケージがかっこよかったり、キャッチコピーが分かりやすかったりすることで、手にとってもらえる回数が増えるかもしれない。やりがいがありますね。


――地方や舞鶴で、デザイナーとして活動する魅力は?

坂本さん:まず、笑顔にダイレクトに出会える機会が多いこと。チラシに少しイラストを描くような、ちょっとしたことでも、すごくすごく喜んでくれるので、やっぱり嬉しいです。
あとは、海や山が近いので、いい素材がいっぱいあります。自然が好きな方には、働く環境的にもすごく気持ちいいですよ。
あと、仲間ができます。いろんなつながりで、どんどん輪が広がっていくので。舞鶴でも、KOKINやHOUKOだけじゃなく、さまざまなタイプのチームが出来てきているので、気の合う仲間が見つかるんじゃないかなと思います。

「自分らしさ」も発信しやすいかもしれません。そして、自分の手で、0から創っていく楽しさや面白さを実感できます。
地方には、まだまだデザインの力が足りていないので、ぜひ力を貸していただけると嬉しいです!

▲鹿の皮を使った商品作りのリサーチに、宮津市の猟師さんのところへ話を伺いにいく坂本さん

自分の「好きなこと」や「気持ち」に素直に“動く”



――坂本さんのお話を聞いていると、いろんな人との出会いから、どんどん新しい活動につながっているのを手に取るように感じることができます。

坂本さん:どこで、何が、どうつながって、どう発展していくのか分からない。舞鶴に来てから、いい連鎖がどんどんつながっていて、次にどんな連鎖が起こるのかいつもワクワクしています。

FLAT+という”場”があることで、いろんな人が行き交い、ここにいるだけですごい情報量なんです。バーチャルやオンライン上でのつながりも、もちろんいいんですけど、でもやっぱり直接お会いしてお話すると、ぶわ〜っと新しいつながりがどんどん広がっていくのをすごく実感していて。

生産者さんもフラッと訪れてコーヒー飲んで行ってくれたりとか、地元の方も近くを歩いていて、気になったから寄ってみたとか、ゲストハウスの宿泊ゲストも時々寄ってくれたり、最近はコワーキングやワーケーションで場所を探してる方の視察や見学も多いです。FLAT+で人と人が出会うことで、いろんな新しいつながりや今まで知らなかった情報に、毎日たくさん出会っています。


――坂本さんのように、自分の「好き」を仕事にして、地方で活躍したい方に、メッセージをお願いします。

坂本さん:自分の趣味や興味、「好きだな」と感じることを選択して行った先には、似たような価値観を持った人たちが待っています。なので、自分の「好きなこと」を発信しながら、自分の気持ちに素直に動いてみたら、自然とそういう人やコミュニティに出会えるはず。

舞鶴は、京都府北部の7市町とも連携していて、心強いコミュニティがあるので、近隣の都市ともどんどんつながって可能性を広げていくことができます。

舞鶴も最近だんだん面白くなってきたなと感じるんですが、でも正直、まだまだ足りないなと思っています。

地方には、まだ手付かずのものがいっぱいあって、余白や伸び白がたくさんあります。「地方をもっと楽しみたい、盛り上げたい」「自分で何かチャレンジしてみたい」という方は、ぜひ!舞鶴を一緒に面白くしていきましょう!

地元である舞鶴に戻り、自分の興味や好奇心に、真っ直ぐに、いきいきと活躍されている坂本さん。興味があることがあれば、自ら足を運び、いろんなところに飛び回りながら、新しいつながりを作っておられました。

坂本さんがおっしゃっていたように、「自分で何かチャレンジしてみたい」という方は、地方というフィールドで活躍してみませんか?

坂本さんの活動をもっと知りたい方は
▶︎「一般社団法人KOKIN
まちを楽しむチーム。古民家の宿「宰嘉庵」やシェアスペース「cafe&bar FLAT+」を運営しているだけでなく、「KOKIN銭湯部」というレトロ銭湯を応援する活動も行っています。宰嘉庵に宿泊し、FLAT+で人と出会いながら一杯飲んで、若の湯で汗を流す、そんな過ごし方はいかがですか?舞鶴に行く際は、ぜひ立ち寄ってみてくださいね!

▶︎「合同会社HOUKO
「株式会社ホリグチ」と「一般社団法人KOKIN」が地域の「宝」を発掘し、全国へ発信していくために、一緒に作ったチーム。ふるさと納税事業に取り組む他、新型コロナウィルス感染症の影響を受け、地域の事業者さんを応援する「Buy Local maizuru」というプロジェクトもされています。

舞鶴のことをもっと知りたい方は
▶︎舞鶴市移住定住ポータルサイト「MY LIFE」
舞鶴市への移住を考えている方は、ぜひご覧ください!舞鶴には、先輩移住者から生業や暮らし、様々な活動を直接聞ける「移住サポーター」という制度もあるので、ぜひご活用ください。

坂本さんに会いたい方は
▶︎京都移住コンシェルジュKOKINまでお問い合わせください!


(文責:京都移住コンシェルジュ 磯貝)

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