”移住して3年、もう地元民の顔してます”和束町で夫婦が見つけた新たな暮らしの楽しみ
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田中 昇太郎さん・美代子さん(和束町)

今回は京都府南部にある、美しい茶畑が一面に広がる「和束町」に移住して3年が経つ田中昇太郎さん・美代子さんご夫妻にお話を伺ってきました。
「もうすっかり地元民のフリをしてます」と楽しそうな笑顔で語ってくださったお二人は、現在地域でさまざまな活動に積極的に関わっておられ、興味深いお話が盛り沢山でした!
10年以上東京で暮らしてきたお二人が、なぜ和束町に移住しようと決断したのか。また、移住後地域でどんな暮らしをされているのか。
気になることを根掘り葉掘り聞いちゃいましたが、一つ一つ丁寧に答えてくださいました!
是非読んでみてください✨
目次 ■ プロフィール □ お茶をきっかけに広がった「和束町で暮らす」イメージ ■ 暮らし始めて気づいた 当たり前の中に眠る和束町の"魅力" □ まだ見ぬ和束ファンに向けて伝えたい、田舎暮らしの極意

田中 昇太郎(しょうたろう)さん(写真左)
東京都出身。東京では民間企業の広報関連業務に従事。和束町移住後は「合同会社スチームパンク」を立ち上げ、広告代理店業務を中心に展開するかたわら、ほうじ茶専門販売店「桶力茶店(おけりきちゃてん)」を経営。和束町内の茶農家が丹精込めて育て上げたほうじ茶を販売している。
田中 美代子(みよこ)さん(写真右)
城陽市出身。昇太郎さんとともに和束町に移住後、3年間地域おこし協力隊として活動に従事。現在は、和束茶を使用した特産品を開発する「恋茶(こいちゃ)グループ」の代表を務める。
最近では、和束茶や郷土料理が体験できる「和束体験スペース 恋茶はん」を開業。


お茶をきっかけに広がった「和束町で暮らす」イメージ
―まずは、お二人が和束町に移住しようと思ったきっかけを教えていただけますか?
昇太郎さん:昔から、夫婦でお茶を飲む時間を大事にしていました。そんな中、妻の実家に帰省した時に、ドライブがてら遊びに来たのが和束町でした。色々飲みましたが、和束のお茶が一番美味しかったんです。景色も綺麗で、「いつかこんなところに住めたらいいよね…」って夫婦で話していました。
そしてコロナ禍をきっかけに、「やっぱり人生、やりたいことをやらないと」と思い、移住を決めました。都会から自然いっぱいのところへ生活環境を変えたいというのもありましたが、やはり生産者さんの近くでお茶に携わる仕事をしたい、という思いが強かったです。
―どうしてお茶を大事にされるようになったんですか?
昇太郎さん:東京では営業職をしていて、仕事柄お茶を飲む機会が多かったんですが、実は一度も「美味しい」と感じるお茶に出会ったことがありませんでした。そこである日、都内で一番高級なお茶屋さんに行ってみたんです。そこで初めて本当に美味しいお茶を味わって、それをきっかけに、どんどんお茶にはまっていきました。
やっぱりお互い東京で働く中でストレスを感じることも多くあって、夫婦でリラックスできるお茶を飲む時間は大切なものになっていきました。

暮らし始めて気づいた 当たり前の中に眠る和束町の”魅力”
―移住するまでに、どんな準備をされましたか?
昇太郎さん:和束町活性化センターの方に、町内を案内してもらいました。家は空き家バンクで見つけました。
美代子さん:地域にとって初めての移住者でしたが、ものすごく歓迎してもらえて嬉しかったです。まさか自分の親より年の離れた友達や、家族以外で「おかえり」・「ただいま」と言い合える人ができるとは思ってもいませんでした。おかげで、和束愛がすごく高まって。「この人たちの為に何かしたい」、「和束町の為になれるような生き方をしたい」と、気づいたら考えるようになりました。
―和束愛が溢れていらっしゃるんですね!やはり普段から地域と関わる機会は多いんでしょうか。
美代子さん:移住後の3年間は、地域おこし協力隊として「和束茶カフェ」で活動しました。ちょうど任期が終わるころに、地域のお母さんたちが「恋茶グループ」を辞めてしまうという話を聞いて、現在はその後を継いでグループの代表をしていて、和束茶を使ったクッキーやドレッシングにふりかけなど、さまざまな特産品の開発・生産に取り組んでいます。また、最近では和束茶や郷土料理が体験できる「和束体験スペース 恋茶はん」を開業しました。
私は、これまでずっと和束を支えてきた人たちが作った伝統や文化を、これからも大切に残していきたいと思っています。そういう立場で、ずっと町に関わっていきたい。私が好きになったこの和束を守り、そして伝えていきたいんです。
昇太郎さん:ほうじ茶専門店「桶力茶店(おけりきちゃてん)」の経営のほか、マーケティングや企画のスキルを活かし、町や地域イベントのプロジェクトマネージャーを任せていただくことも多いです。消防団や、保育園と高齢者との運動会、地域と学校とで一緒に学ぶ社会教育関連の取組など、幅広く活動させていただいています。
昨年には、和束の茶農家さんを集めて自分たちのお茶を振る舞いあう、お茶のテイスティングイベント「茶源郷和束ティーパーティー」なんかも企画しました。実はほうじ茶って茶農家さんにとっては、家庭で日常的に飲むものというイメージであまり注目されていなかったんですが、家庭ごとに焙煎方法にこだわりがあるんです。なのでイベントでは、農家さん達が初めてお互いのお茶をしっかり飲んで、「ほうじ茶ってひとつひとつこんなに違うんや」って驚いていただけました。その印象が自分の中に強く残っていて、桶力茶店を始めるヒントになりました。お店のサブタイトル「Roasted Tea Party」の由来でもあります。
こんな風に”当たり前の中に眠る魅力を活かす”ことを大切にしています。

―本当に日々精力的に活動されておられますが、移住してみて大変だったことや、ギャップを感じたことはなかったですか?
昇太郎さん:大変だと感じることは寒さぐらいですね。移住する前はあまりイメージしてなかったですが結構雪が積もるんです。なので想像してたよりも寒いなとは感じました。あとはギャップといえば、和束がここまで観光地の顔をしているとは思っていませんでした。地域を活性化したい!という話はよく聞きますが、和束については既に活性化しているという印象でした。町内も元気で、茶農家さんもすごく熱意のある方が多く、これを世の中に伝えていくだけでいいんだと、自分の役割を認識させられました。
まだ見ぬ和束ファンに向けて伝えたい、田舎暮らしの極意
―これからの目標を教えてください。
美代子さん:地域の人口を増やしたい!まずできることといえば、私達のようにいつか和束に住みたいと思ってもらえるファンづくりをすることです。消費するばかりだった都会生活から一転して、和束に来てそうした暮らしを支えている、きらびやかなものを生み出している人の人間力のすごさに気づかされました。そんな私達と同じ思いで和束に移住してくれる人を、和束のためにちょっとでも増やせたらという思いが、今の活動につながっています。
―和束町に移住したい方に向けて、伝えたいことはありますか?
昇太郎さん:都会での、自分が望んだものだけを選択する、いわゆる「効率的」な暮らしもそれはそれでいいですが、ちょっと飽きてしまうとも思うんです。都会と比べると、田舎は何もないし不便だと感じるかもしれませんが、そんな田舎ならではの「不便」を解決することにも楽しさがあります。あと、田舎に住むと絶対何かには巻き込まれていくんです。それこそが幸せでもあります。
都会に住む皆さん、田舎ならではの「巻き込まれる幸せ」を味わってみませんか?
◎番外編

田中さんご夫妻お気に入りの一枚、題するは「日々噛み締める”洗濯物を自由に干せる”幸せ」。
都会だとついつい気にしてしまうことも、周りを気にせずのびのび出来ちゃうんです。これも田舎ならではの幸せですよね!
今回のインタビューでは、お二人のお話しされる様子から、和束での暮らしが本当に生き生きとしていて、日々の生活を心から楽しんでおられる姿が目に浮かぶようでした。聞き手としても、その温かく豊かな暮らしぶりに惹かれ、思わず和束に足を運んでみたくなるような、そんな魅力あふれるお話でした。
特に田舎ならではの暮らしの魅力について語っていただいた場面では、「不便」を解決していくことが楽しい、というのが目から鱗でした…!確かに、都会での効率的な暮らしは、便利で無駄がありませんが、どこか寂しかったり、退屈に感じておられる方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
お二人のお話にどこか共感できる部分があった方は、ぜひ一度和束に足を運んでみませんか?
(文責:京都府農林水産部農村振興課 福山)