京丹後市大宮南地区:「来なるの待っとるでー!」“最先端の田舎”の魅力を探る vol.2
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京都府北部、日本海に面した丹後半島にある京丹後市、その最南端にある「大宮南(おおみやみなみ)地区」。
vol.2では、大宮南に最近移住された方や、新しくカフェをオープンされた移住者のもとを訪れ、さらなる地域の魅力に迫っていきます。
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目次 「地域おこし協力隊」 谷村衣理さん ■ 「また会いたい」何度も通ううちに、大宮南のファンから移住者へ □ 地域おこし協力隊の募集が、Iターンの決め手に ■ いろんな世代や人が混じり合う交流拠点をつくりたい 「tabel table」 ハミルトン純子さん □ 子どもの頃の思い出が詰まった、大好きな京丹後へ孫ターン ■ 丹後の食を伝えるカフェを開業。地域の人が集える場所として □ 食と人からつながる、つなげる、新しいつながり
「また会いたい」何度も通ううちに、大宮南のファンから移住者へ
「地域おこし協力隊」谷村衣理さん
大宮南に何度も通ううちにリピーターになり、ファンになり、ついに今年、2021年9月に移住された谷村衣理(たにむら えり)さん。現在は、大宮南のある京丹後市・大宮町の地域おこし協力隊として活動されています。
「『田舎に住みたい』というのは、なんとなくずっと、漠然とあったんです。私は京都市内で生まれ育って、親戚もほとんど京都市内だったので、子どものときから、”夏休みに田舎のおばあちゃん家に行って、庭の野菜をつまんで食べる”っていうのにずっと憧れがありました。」(谷村さん)
最初はただ漠然とあった田舎への憧れが、4年前たまたま見つけた大宮南の移住ツアーに参加したことがきっかけで、移住へとつながっていきました。
「1泊2日で、地域の方と参加者が混ざり合って交流できて、地元のお母さんが作ってくれたご飯を食べたり、青木さんの畑の野菜を収穫してピザを作ったり、山登りに行って滝を見たり。参加者と地域の人との垣根がないのが本当によくて、楽しくて美味しくて、地域の人とも仲良くなって『またみんなに会いたいな』って、3年連続リピートしたんですよ。
初めて参加したときに泊まらせてもらったのが、川口区長の農家民泊で、おうちに泊まらせてもらいながら、いろいろお話しさせてもらったのもよかったのかなって。地域のことをたくさん話してくれて、それがすごく面白くって。」
初めはただ楽しくて通っていただけでしたが、何度も足を運ぶうちに、大宮南への移住を少しずつ考えるようになっていった谷村さん。ただ、移住へと踏み切る決定打が見つからないまま、しばらく過ごしていました。
「去年は新型コロナウイルス感染症の影響で、ツアーはなくなってしまったんですけど、今年、奥大野にオープンした”暮らすように滞在できる”地元交流型ゲストハウス『base sanablend(以下、サナブレンド)』の図面を描くために、何回か奥大野に来させてもらっていました。建築系の仕事をしていたので、移住ツアーのときに知り合った方から『図面を描くの手伝ってくれない?』と誘ってもらって。併設されているアイリッシュカフェ&キッチンスタジオ『tabel table(タベルテーブル)』と蔵は先に工事が終わっていたので、私はゲストハウス部分の図面を描かせてもらいました。」
地域おこし協力隊の募集が、Iターンの決め手に
「サナブレンドのゲストハウスは今年4月にオープンしたんですけど、そのちょっと前くらいに『空き家あったよ』って川口区長から連絡があって、家を見に行ったんですよ。ツアーの最後によく『空き家あったらまた教えてください〜!』と川口区長に言っていたら、探してくれていて。」
でも、そう言われて改めて”移住”を真剣に考えてみたところ、いろいろ不安になってきてしまったという谷村さんは、一度、京都移住コンシェルジュの相談窓口に相談に行ってみようと思われたそうです。
「そこでも、ぐっと背中を押してもらったんですけど、まだ自分の中での決定打がなく、グルグルと迷っていました。そんなときに、丹後エリアを担当していた京都移住コンシェルジュから、『そういえば今、京丹後市で地域おこし協力隊を募集してますよ』って。同じ時期に丹後暮らし探求舎の小林さんからも、同じ連絡をいただいて。」
「これ、盲点やった!」と、谷村さんが募集を見たときには、すでに締め切りの1週間前だったのだそう。
「大宮町で募集していた活動テーマが『空き家の再生・活用による地域課題解決と活性化』だったので、建築系の仕事やサナブレンドの経験も活かせてぴったりだと思い、急いで応募しました。そして無事に今、ここにいるという。
地域おこし協力隊の募集がなかったら、たぶん私、今ここにいなかったと思います。」
いろんな世代や人が混じり合う交流拠点をつくりたい
移住してみて、京丹後の自然の豊かさや、自然の循環の中で暮らしているのを肌で感じられるのが、すごく心地いいと話す谷村さん。
「日が長いうちは自転車で通勤していたんですが、なにげない景色がすごく綺麗で、雑草も季節によって変わるんだっていう発見もあったりして。京丹後に移住してからは、「おはようございます!」って挨拶してくれる方が多いんですが、地域の人に挨拶するついでに、嬉しくて、お花とか鳥とかにも「おはよう」って言っています(笑)。
隣のおじちゃんが余った白菜とキャベツの苗をくれて、自分の庭で家庭菜園も最近始めたんですよ。」
何度も足を運びながら、移住を決めていった実体験から、これから地域おこし協力隊として取り組んでいきたいことも話してくれました。
「大宮町に、地域の人も地域外の人も集まれて、交流できるようなスペースができたらいいなって思ってます。地域のおじいちゃん・おばあちゃんも気軽に来れて、いろんな世代が混じりあえるような場を作りたいなって。
この3〜4年、大宮南に来たくても来れなかった1つの要因に、気軽に来れる場がなかったのが大きかったなと、自分の経験から感じていたんです。まだ移住という段階ではなくても、ふらっと来たいときに、気軽に滞在できたり立ち寄れる、地域の方と触れ合えるような場があったらいいなって。ただの観光ではなく、人に会いに来る場みたいな。私もやっぱり、大宮南にはいつも人に会いに来てるところがあったので。」
と語る谷村さんだからこそできる場づくりが、今からとても楽しみです。
子どもの頃の思い出が詰まった、大好きな京丹後へ孫ターン
「tabel table」ハミルトン純子さん
谷村さんが設計に携わったサナブレンドに併設されているカフェ「tabel table」のオーナー、ハミルトン純子さんも、奥大野の魅力に魅せられて移住してきた1人です。もともと純子さんのおばあさまが住んでいた京丹後市・奥大野に2014年にご夫婦で移住され、今は、丹後の食の素晴らしさを発信する事をテーマに活動されています。
「子どもの頃から、とにかく田舎が大好きで、おばあちゃんの家がある奥大野によく遊びに来ていました。夏休みとかは長期で1ヶ月近く過ごしたり、地元の子とも仲良くなって遊んだり、幼い頃の思い出もいっぱい詰まった地です。アイルランド人の主人と結婚して子どもができてからも、頻繁に遊びに来ていたので、私の子どもたちにとっても、丹後はふるさとのような場所になっています。
『こっちに住めたらいいな〜』とずっと思いつつも、子どもが小さいうちはなかなか叶わず。アイルランドと日本(京都市)を行ったり来たりしていたんですけど、子どもが大きくなり、アイルランドから帰ってきたのをきっかけに、祖母の家に旦那と2人で移住してきました。」(純子さん)
奥大野にはよく遊びに来ていたので、移住する前から青木さん一家とはとても仲が良く、京都市に住んでいたときには、青木さんのお野菜をずっと送ってもらっていたという純子さん。移住を決めたときも、「青木さん一家がいたことは、やはりすごく安心でしたね。」と、その存在はすごく心強かったといいます。
丹後の食を伝えるカフェを開業。地域の人が集える場所として
2018年に今の場所でアイリッシュカフェ&キッチンスタジオ「tabel table」をオープンした経緯を聞いてみると
「始まりは区長さんなんですよ。仕掛け人ですね、川口区長は。今、tabel tableとサナブレンドがある古民家が売りに出たときに、ここを買い取って『第2の公民館のような地域の方が集まれる場を作りたい』と思われていたみたいで。大宮南に10年近くコンサルとして関わってきた栗山さんという方と一緒に、その構想を進めようとされていたんです。実はその方、私たちが京都市に住んでいたときからの知り合いで、すごく近しい関係だったんですよ。ほんとに偶然だったので、私たちもびっくりしました!
私たちが奥大野に移住してからも、栗山さんとは仲良くさせてもらっていたんですが、あるとき『今、こんなことを考えていて、何かいいアイディアないですかね?』と、サナブレンド構想の相談を持ちかけられたことがあって。そのときは『そんな場ができるんだったら、私も何かできたらいいな』くらいの感じだったんです。でも、私も食を伝えるための”場”があったらいいなとは、ずっと思っていて。」
それから半年くらい経った頃、たまたまつながったご縁で、地域ビジネスを応援する「きょうと元気な地域づくり応援ファンド」という助成金の機会が巡ってきたときに、ふと純子さんの頭に思い浮かんだのが、サナブレンドの構想でした。早速、栗山さんに相談してみると、話を進めてくれ、今のゲストハウスとカフェ、そして地域の方が集えるスペースという形が出来上がっていきました。
2018年に、まずは不定期開催のイベントやワークショップなどから始めていったtabel table。ゲストハウス「サナブレンド」に併設するカフェとして、2020年6月に先行オープンし、丹後のおいしい食材をアイルランドスタイルで楽しめる場所になっています。カフェは週末を中心にオープンしており、不定期で料理教室も主宰していたり、ゲストハウスの宿泊者は、ここで美味しい朝食を楽しめます。
オープンパーティーのときに、今まで交わり合うことのなかった地元の方たちが、集まる光景を川口区長が目にしたとき、「僕がしたかったのはこういうことなんや!」と言っていたのだそう。「地元の方たち同士でも、普段ふつうに暮らしていると、世代が違ったり仕事が違ったりで、意外と交わり合う機会がないみたいで。ここが、そういう場所になっていったらいいなと思っています。」と純子さんが話してくれました。
食と人からつながる、つなげる、新しいつながり
カフェだけでなく、地元丹後のイベントでも引っ張りだこの純子さんですが、移住してから、そのつながりをどのように作っていったのでしょうか。
「tabel tableを始める前、京丹後に移住してきてすぐの頃、『ALL TANGO』というグループで、丹後で出会った3人の仲間と一緒に活動していたんです。丹後をもっとみんなに知ってもらおう、丹後で面白いことをやっていこうというコンセプトで、『アウトドア・食・ミステリー』の3つを切り口ににしたイベントを行っていました。
3年くらい手弁当で、自分たちが楽しいからやっているという感じだったんですけど、そのとき参加してくださった地元の方とか、本当にいろんな方とのつながりができて。そこからどんどん広がっていって、今につながっているんです。
丹後って、”丹後あるある”なんですが、イベントが本当に多いんですよ。そんなイベントに今いろんな方から声をかけてもらえているのは、そのALL TANGOの活動でできたつながりのおかげだなって、すごく感じます。」
「奥大野の垣根のないオープンでウェルカムな雰囲気は、区長さんの存在が大きいんじゃないかなと思っています。」と、奥大野の魅力についても教えてくれた純子さん。
「明るくて、本当に壁のない、川口区長がいるからこそ、そこからどんどん波及していってるのかなって。私も、まだ移住する前から、ここに遊びに来たときには、いつも川口区長に声をかけてもらっていました。
先日、ここで民族音楽のライブをやったときにも、『夜に公民館の前でみんなとBBQとピザをするので、区長さんもよかったら寄ってください』ってお誘いしたら、地域の方と一緒に3〜4人で来てくださって。明け方まで飲んで食べておしゃべりして、次の日のお昼には、今度は区長さんのところに招待していただいて、『楽農くらがき』のメンバーと一緒に、ご馳走を用意してくださっていたんです。奏者のみなさんも帰ってくる頃には『本当にもう大好きやわ、ここのおっちゃんたち!最高〜!』って、みんな奥大野が大好きになって、すごく気持ちよくライブをしてくださいました。」
純子さんのつながりから遊びに来られる方は、今まで奥大野の方たちが出会ったことのなかったような方も多いらしく、でもだからこそ、区長さんがそういう新しい人たちを「面白い!」と、余計に歓迎してくれるのだそう。
「主人の外国人の友人が来てくれたときも、地域のみなさんとの交流会をしてもらって。言葉の壁を越えてみなさんすごく楽しんでくれて、友人たちもすごく喜んで『また来ます』って言ってくれるんですよね。」
昨年は、旦那さまが地域の行事や集まりに、よくお手伝いに行っていたそうで、
「今では私より主人の方が、みなさんの名前をよく知っているくらいです。本当に地域の方のおかげで、主人とも『本当にラッキーやね。ここまで受け入れてもらえて』って話していて。
そういう人のあたたかさっていうんですかね、奥大野はそれが本当に素晴らしいんですよ。」
純子さんや他のみなさんがおっしゃっていた言葉の通り、取材にお伺いした1泊2日だけでも、みなさんの垣根のない、あたたかくてウェルカムな空気を肌で感じた時間でした。初めて訪れた土地なのに、まるで地元に帰ってきたような、すごく居心地のいい、そんな地域。移住したくなるみなさんの気持ちが、手に取るように伝わってきました。
まずは「ふらっと遊びに行ってみたい」という方も、「移住を考えてみようかな」という方も、美味しいごはんと豊かな自然を求めている方も、ぜひ一度、大宮南を訪れてみてはいかがでしょうか。
大宮南に興味を持った方は
▼ 京丹後・大宮南移住促進サイト「大宮南で待っとるでー!」
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京丹後市・大宮南地域を訪れてみたい方は
▼ 京丹後市移住支援センター「丹後暮らし探求舎」または
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(文責:京都移住コンシェルジュ 磯貝)